第36話 Finally we are no one.

 目が覚めた。

 駅に着いていた。


 歩く人々。誰も傘を差していない。

 ロータリーが夕映えに染まっていた。


「終点ですよ」

 運転手は、スピーカー越しに言った。


 手の中の整理券が消えている。

 乗客は、わたし一人だった。


「あの、リンクに戻りたいんですけど」

「無理だよ。これ、回送だから。一回降りて、乗り直してください」



 オレンジ色に霞む空。

 綴れ重なる灰色の雲に、うっすらと虹が架かっている。


 洵が、本当にいるのか分からなくなった。

 

 洵。

 わたしの、たった一人の、わたしたち。

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