なんだかんだでそっくりだ……



 地下へ下りる場所を広めるわけにはいかないので、イラークに先導され、アキ、祖母、王子、ラロックだけで近くの森へと向かった。


 先頭はイラーク。


 次がアキと祖母。


 その後ろに、王子とラロックが棒に足をくくりつけたイノシシ一頭を担いで続いた。


 歩く道道、アキの祖母がアキにいろいろと語って聞かせる。


「おじいさんはあの世界とこの世界の関わりなどなにも知らない人だった。


 それで最初はいろいろと苦労したんだよ。


 性格的にも朴訥ぼくとつな男でなんの面白みもなかったし。


 モテてモテて相手を選べなかった私と違って。


 ただただ誰も現れなかったので結婚しなかったって男だから。


 最初は上手くいかなくてね」


 そんな祖父とぶつかり合いながら、まるで夫婦のように暮らしはじめるまでの長い長い物語を二分程度で聞きながら、アキたちは意外に明るい森の中を歩いていた。


 この辺りは木々が若いのか、あまり鬱蒼とはしていなくて、月明かりがかなり差し込んでいたからだ。


 一度地割れしたあとで、新しい木々が生え変わったからかもしれない。


 此処に来るまでに見たこの辺りの他の木々は千年くらいは経ってそうな巨木ばかりだった。


「おじいさんは、昔はジョークのひとつも言えない男だったんだよ」


「そうなんだ、今と違うね。

 でもそういえば、おばあちゃんって、本当は私のおばあちゃんじゃないのよね?


 じゃあ、実は見た目通り若いとか?」

と訊いてみたが、祖母は微笑んで答えない。


 ……見た目通りではないようだ。


 世界を脅かす地割れより恐ろしい話題を振ってしまったようだと思いながら、アキは急いで話を変える。


「と、ところで、おばあちゃんはどうやって此処に来たの?」


「異世界への門となっているあの花嫁のれんをくぐってきたのさ」


「そうなんだ。

 じゃあ、アンブリッジローズ様のところに出たの?」


「いや、よくわからない湿った暗いところに出て。

 岩戸のようなものを開けて此処まで来たのよ」


 うん? という顔をしたイラークが、

「それは何処のことですか」

と祖母に訊いていた。


「あの辺」

と祖母はちょうど近くにあった洞穴を指差した。


 崖の岩肌に穴がぽっかり空いている。


「出てきたら、なんだかいい匂いがしたから、そっちに向かって歩いていったら、イラーク様たちがいたというわけよ」


 イノシシ担いだ王子が呟く。


「……何故、みんな、イラークだけ、イラーク様なんだ」


 アキと祖母は声をそろえて言った。


「美味しいもの作ってくれるから」


 その声の揃い方に、王子は、

「血のつながりはなくとも、祖母と孫だな。

 ……二人とも、美味かったからと言って身をゆだねかねん」

 などと呟いている。





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