物語のはじまり


「もう出立してしまうのか。

 寂しくなるな」


 アヒージョとたこ焼きとチキンチキンごぼうを食べたアキは、満腹なので、もうこのまま此処で一休みしたい気持ちになっていたのだが。


 こんなことを繰り返していると、いつまでも国に行けないし。


 そのうち本当に、王子が帰ってこないことで、戦争になってしまっても困るので、アキたちはアントンの国を出発することにした。


 だが、城門でアントンたちに別れを告げようとしたそのとき、何処かで見た馬車がやってくるのが見えた。


「王子ーっ。

 よかった。


 此処にいらっしゃると伺ったのでっ」


 それは、あの、宝石をのせて帰ったはずの馬車だった。


「どうした、お前たち。

 先に国に戻ったのではなかったのか」


「いや、それが大変なんです。

 途中で地響きが聞こえたと思ったら、いきなり、目の前の地面が割れて、国に帰れなくなってしまったんです。


 底が見えないほどの亀裂で。


 ともかく、ぐるっと回って向こう側に渡れる場所を探そうと思っているのですが。


 王子たちにもお知らせしておこうと思いまして」


 アントンが眉をひそめた。


「そういえば、この城に移り住んでから、いろいろ文献も読み漁ったのだが、数百年前にも似たようなことがあったらしいぞ。


 突然、大地が割れ、徐々にそれが広がっていって、人々が行き交うことが難しくなったと」


「それはどうやって収まったんですか」


「うむ。

 旧時代的なやり方でそんなもので効果があったのかと思うのだが。


 突如現れた亀裂によって、何分割かにされてしまった何処かの国が姫を生贄に捧げて沈めたとか」


 アキと王子は顔を見合わせる。




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