盲点でしたよ


 それはともかく、出来上がったアヒージョとたこ焼きをみんなで食堂でいただくことになった。


「ほう、これがお前たちの家庭の味か」


 これ、何人座るんだという長い長いテーブルで、アントンが言う。


「違うと思います……」


 日本では、ほぼ、呑み屋の料理ですよね……と思いながら、アキは言った。


「そうだ。

 あれも美味しいですよ。


 友人のところの、最近できた郷土料理のチキンチキンごぼう」


 ごぼうと片栗粉をまぶしたチキンを油で揚げて、甘辛いタレと絡ませたものだ。


「それは郷土料理なのか。

 最近できたのに」

と王子がいらぬツッコミを入れてくる。


「まあ、そこのところはともかく。

 甘辛くて美味しいんですよ。


 あまりの美味しさに、すぐ、ごぼうごぼうごぼうになるくらい」


「それはチキンしか美味くないという話か」

と王子が言ってきた。


「いや、うちで作ると、年寄りが多いからか、噛みやすいものからなくなるんですよ」


「そういえば、お前は誰と暮らしていたのだ」


 そうアントンが問うてくる。


「母親がこの世界にいるかもしれないのなら、普段は誰と暮らしていたのだ?」


「ああ、おばあちゃんたちです」

というアキの答えに、


「……誰の?」

と王子が訊いてきた。


「おばあちゃんは母方の祖母で……」


 言いながら、アキは、ん? と思う。


 王子が何故、今訊き返してきたのか、ようやくわかったのだ。


「そうだ。

 私のおばあちゃんって何者なんですかね?」


 もしも、母親がこの世界のマダムヴィオレなら、あの祖母や祖父は何者なのだろう。


 まあ……もともと、おばあちゃんに関しては、何者だって感じの人なんだが。


「うーん。

 でもまあ、あのおばあちゃんが何者であったとしても、特には驚かないですけどね」

と言って、


「どんなバアさんだ」

と王子に言われてしまったが。


 いやもう、とんでもないバアさんを今見たばかりなので、うちのバアさんなんて、たいしたことないバアさんのような気がしているのだが。


 そう。

 見ようによっては小娘に見えるバアさんなど――。




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