アヒージョとはなんだ?


 アンブリッジローズが去ったあと、少し土産話でもして出立しようと思っていたのに、アキたちはそのまま留められていた。


「どうだ、アンブリッジローズ。

 我が国の料理に満足しているか。


 なにか食べたいものがあったら言え。

 また長旅になるのであろう。


 満足に食事ができない場所もあるかもしれないからな」

とアントンが言ってくれる。


「えっ? いえ、そんな申し訳ないです」

と断ったのだが、どのみち、なにかでもてなすのだから、食べたい物を言えと言われた。


「うーん……。

 じゃあ、アヒージョとか」


「アヒージョとはどんなのだ」

とアントンに問われ、アキは料理長の許まで行って、料理の特徴を言う。


 自分では作ってみせる自信がなかったからだ。


 イタリアンの店の看板に描かれていそうな、太ったヒゲの料理長は深く頷き、それっぽいものを作ってくれた。


「ありがとうございますっ。


 そうだ。

 これ、たこ焼き器で作ってもいいみたいですよ。

 簡単で美味しいらしいです」

と言って、今度は、


「たこ焼き器ってなんだ」

とアントンに問われる。


 今度は料理長に、とりあえず、たこ焼きの説明をしてみた。


 すると、すぐにたこ焼きっぽいものが出来上がってきた。


「この方、すごくないですか?

 まるで魔法使いですよ」


 そう驚くアキに、王子が、


「……どうした、また身をゆだねたくなったのか」

と嫌味まじりに言ってくる。


 まだ根に持ってたのか……と思ったが、王子は溜息をつきながらも、


「お前のフリーズドライもなかなかの魔法だぞ」

と言ってくれた。


 ちょうど料理長が旬の野菜が採れすぎて持て余しているらしいので、


「フリーズドライッ」

とそのカラフルなイタリア野菜のようなものをフリーズドライにしてあげて喜ばれる。


 だが、このままでは元に戻すとき使いにくいかなと思い、料理長に聞いて、一部の野菜を、


「ざく切り。

 ……からの、フリーズドライッ!」


 ――にしてあげて、料理長に身を委ねられそうなくらい感謝された。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る