リバースッ!


「リッ、リバースッ


 リバースッ


 リバースッ」


 叫び続けるアキの両横から男二人がクッキーを食べさせてくれたり、紅茶を飲ませてくれたりして、栄養を補給してくれる。


「リバースッ」


 このままでは私が干からびて老婆になってしまうがっ、と思ったとき、

「これ、そこの者っ」

という声がした。


 美女と化したアンブリッジローズが使用人を呼び止めたところだった。


 振り向いた使用人が、ぎょっとする。


 アンブリッジローズは彼に向かい言った。


「汝の望みを叶えよう。


 ……これ、叶えようというのに。


 おもてを上げいっ」


 だが、アンブリッジローズのあまりの美しさに若い使用人の男は平伏して顔も上げられない。


「困ったな」


 男に一泡吹かせられず、つまらなさそうに言うアンブリッジローズの後ろから、


「あのー……

 中間はないんですか、中間は」

とアキはリバースをやめて言った。


 その素晴らしい美貌と老婆の中間はないのだろうかと思ったからだ。


「難しいことを言うな」


 男が顔を上げ、

「ああ……夢だったのですね」

と言う。


 アンブリッジローズはもう老婆に戻っていた。


「今、そこに目も眩むような美女が現れて……。


 やはり、あのような美しい女性が本当にこの世にいるはずないですよね」

とアキに同意を求めてくる。


 アキは両の腰に手をやり、遠ざかるその男を見ながら呟いていた。


「……なにか微妙に不愉快なんですが。

 アンブリッジローズ様には、ははあっ、ってなるのに、私の目は真っ直ぐ見て話せるんですね」


「大丈夫だ。

 俺はお前程度で充分だ」

と王子がポン、と肩を叩いてくる。


「私もその程度で充分だ」

とアントンも肩を叩いてきた。


 ……返す返すも不愉快ナリ。



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