誰と誰がですか……?

 

「ああ、実はお母さんをこの世界で探してみようかと。

 それで、ちょっとしか、あの携帯充電してなかったので充電器を……」


 カラン……と音がした。


 イラークが振り返ると、うさぎがお盆を落としていた。


「そいつが踏んで壊した」


 うさぎを指差し、容赦無く言うと、うさぎは頭を抱えて、苦悩するようなポーズをとる。


 ええーっ? と声を上げるアキにうさぎが頭を下げながら、壊れた充電器つきライトを渡していた。


「またそのうち手に入れておくよ」


 ちょっと溜息をつきながらイラークが言うと、


「……そ、そうですか。

 ありがとうございます。

 すみません。


 いや、無理はしないでください」

とアキがちょっとしょんぼりしながら言う。


 その横から王子が言ってきた。


「すまない。

 ありがとう。


 だが、一度、国に帰ろうと思うんだ。

 またここに来るまで少し時間が空くかもしれない。


 ああ、結婚式には二人とも出席して欲しいんだが」


 王子はイラークとミカを見て言ったあとで、うさぎに気づき、


「……じゃあ、三人で」

と言った。


 三人、かどうかはわからないが。


 まあ、もう人と変わらないか、とイラークが思ったとき、アキが小首を傾げて王子に訊いていた。


「結婚式?

 誰のですか?」


「……俺とお前のに決まってるだろう」


「ニセの花嫁なのにですか?」

とアキが言ったとき、突然、彼女らの側から、


「あるぜ」

と声がした。


 王子の後ろのテーブルで骨付き肉を食っていた小太りな男だった。


 たまに見かける男なのだが、名前も知らないし、年もよくわからない。


 色が白くて丸くてつるつるなので、年齢がわかりづらいのだ。


「あるぜ、それと似た器械」


 そう男が言い、えっ? とアキが身を乗り出す。


「ほんとうですか?

 ただ明かりがつく奴とかじゃなくて?」


 ただのライトの可能性もあると思ったのだろう。


 だが、男は、

「いや、それとそっくりな奴だ」

と壊れた充電器を見ながら言ってくる。


「森で拾ったんだが。

 ぐるぐる回してると明るくなるんで持ち歩いてたんだ」


「あのっ、それ、売っていただけま……」

と言いかけ、アキは止まる。


 王子の金はあるが、自分の金はないからだろう。


 王子は、いい、と言い、前に出た。


「幾らだ」

と男に問う。


 そういう言い方したら、お前らの身なりを見て、金ふんだくられるぞとイラークは思っていたが、男は、

「金の問題じゃねえな。

 重宝してたからよ。


 でも、あんたがそんなに欲しいのなら、タダで譲ってやってもいいぜ」

と言ってくる。


「ほんとですかっ?」


「ああ、その代わり、勝負だ」


「えっ?

 勝負?」

とアキが訊き返す。



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