スタート地点に戻ってきてしまいました


「行ったか」


 イラークは妹とうさぎとアキたちを見送った。


「どうもこの店には騒々しい奴しか来ないようだな」


 そんなイラークの呟きに、ミカが苦笑いしたとき、イラークは、ああ、そうだ、と言った。


「そういえば、こちらの世界に飛んでくる奴は、もともとこちらの世界で生まれた奴が多いようだと偽アンブリッジローズに言うの忘れたな」


 道の先を見てみたが。

 なんだかわからないが揉めながら去っていったアキと王子の姿はもうなかった。


 視線を戻したそのとき、ん? と気づく。


「お前、なに踏んでんだ?」


 去っていくアキに見惚れてミカが落とした充電器をうさぎが踏んでいた。


「あっ、こらっ、うさぎっ」

とイラークは声を荒げる。


 うさぎの巨体で踏まれた充電器は壊れていた。


「……丸焼きにしてやろうか」


 それを手に低い声で、ぼそりと言うと、うさぎがビクッとする。


「冗談だ」

とうさぎの肩を叩き、イラークは宿に戻った。


「リアリティありすぎです、お兄様」


 ミカは苦笑いして、そう言っていた。




 ぽくぽくと馬を走らせ、スタート地点に戻ってきてしまいました。


 アキは塔を見上げる。


 この世界に来るには、なにかのきっかけがある、か。


 私の場合はあの花嫁のれんかな。


 いや、まだ居酒屋に突っ伏して寝ている可能性もあるから。


 それなら、きっかけは縄のれんだがとアキは思ったが。


 ずっと馬に乗っているのでお尻が痛く。


 その痛みが、やはり夢ではないのではと思わせる。


 でも、王子様と馬に乗って、ぱかぱか塔に迎うとか。


 それもこんな夢のようなドレスを着て。


 やっぱり夢なんじゃないかな、と思いながら、アキはあの始まりの塔を見上げた。





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