いや、正解はわからないですけどね……


「なんでお前の親のケータイが此処に落ちてるんだ」

と王子が訊いてきた。


「いや~、なんででしょうね~。

 たまたま同じ名前なだけかもしれないんですけど」


 アキは赤いガラケーを手に小首をかしげる。


「そもそも私、よく知らないんですよね、お母さんって」

と言って、また不思議なことを言い出したという顔を王子たちにされた。


「いや、私、物心ついてから会ったことないんですよ、お母さん。

 死んだとは聞かないんで、何処かにいるとは思うんですけどね。


 クリスマスや誕生日に、これはお母さんからと言って、いつもおばあちゃんたちにプレゼントもらってたし」


「……あのー、お父様は?」


 遠慮がちにラロック中尉が訊いてくる。


「……何処かにいるんじゃないですかね?」


 死んだとは聞かないし、とまたアキは同じようなセリフを繰り返す。


「なんだ、そのふんわりした家族構成はっ」

となにもかもがハッキリしないことにイラついたらしい王子が言ってきた。


「そもそもお前、母親のものではないかと思われる花嫁のれんとやらをくぐって、ここに来たんだろ?

 お前の母親、こっちの世界にいるんじゃないのか」


「いや~、その可能性を疑わないでもなかったんですけどね。

 そういえば、あのアンブリッジローズ様の塔に同じのれんがありましたし。


 でも、こちらに着いた途端、怒涛の展開で、あなたの花嫁となって、そのまま出発してしまいましたしね。


 アンブリッジローズ様はなにかご存知なのかもしれませんが……」


 それにもしかしたら、あの人も……とアキはある人物を思い浮かべた。


「ま、なんにせよ、食べていけ」


 どん、と目の前に料理が置かれる。


 イラークの後から、巨大うさぎも大皿にのった料理を運んで来た。


 なんの肉だかわからない肉だったが、うさぎが運んで来たので、


 まあ……うさぎではないのかな……、と思いながら、美味しくいただいた。






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