【デート回】久住さんと一日一緒にいたら、一生一緒にいたいと思う①

 舞香に(股間を蹴られるなどをされて)促されて、俺たちは初めてのデートへ。

 緊張してるかって? もちのろんですよ。


 待ち合せの駅前で、俺は舞香の言われたとおり集合時間である10時の、10分前から待っていた。

 気持ちを落ち着かせるために、俺は腕を組みながらベンチに座るが──全く落ち着かない!

 ……というかこれ、デジャブか?

 いや、あのときと全く同じ状況だ。

 俺が初めて久住さんとショッピングモールに出かけたとき。颯人の誕生日プレゼントを選ぼうって誘われたときのことだ。


「そういえば花火大会以降、颯人とあんま連絡取ってねぇな……。まぁ、いっか」


 ふと思い出しLINEを開くが、どうせ二学期になれば会えるだろうということで、トーク画面を閉じた。

 きっとアイツのことだ。バレーが忙しくて、花火大会とか、そんなことに参加してる場合じゃないんだろう。だって全日本ユースだし。バレー界のアイドルみたいなもんだし。


「ウタくーん」

「おっ、久住さ──おぉ……」


 ここでようやく主役の登場。

 今回は今までと打って変わって、純白のワンピース姿。おまけに髪型もいつもと違って三つ編みなので、思わず感嘆とした声が漏れ出た。


「どっ、どうかな?」

「……天才」

「天才?」


 いかん、つい興奮してオタクみたいなコメントが出てしまった。



 〇



『可愛い女の子と一時間一緒にいると、一分しか経っていないように思える』


 これはかのIQ160超えの天才科学者、アルベルト=アインシュタイン先生の言葉だ。

 けれど以前の俺は緊張が度を越していて、一時間経っただけなのに、気分は三時間も経過したように思えた。

 まぁこれも、相対性だろう。……ですよね? 


 さて、今日の俺はどうだろう?

 今はめでたく、久住さんの彼氏になったわけだ。……実感がまだ沸かないけど。

 そんな俺が久住さんと初めて、一日中一緒にいるわけだ。

 果たしてアインシュタイン先生のように、時間が短く感じるのか? はたまた以前のように長く感じるのか?


 ……そんなことより。


「ウタくん?」

「ひゃいっっっっ!!!??」


 まだ緊張が取れないんですけど!?


「どうしたの? 難しい顔して」

「いやいや、別に!? なんでもないよ??」


 言えない。何を話せばいいか分かりません、なんてかっこ悪いこと言えない!!

 俺がチキン野郎である、という事実は花火大会の会場で捨ててきた、つもりになっていた俺。

 もちろん『つもり』なので以前よりたちが悪く、謎のプライドが俺をかっこつけさせようとするのだ。


「……もしかして、私との話題に困ってる?」

「うぐっ……」


 しかしそんなの、久住さんには通用しなかった。

 ということで、ここは原点回帰。おかえり、ダメな俺。


「あぁ、うん。めっちゃ緊張してて……」

「ふふっ、

「へぇ、久住さんもかぁ……。って、マジ?」

「……うん」


 顔を俯かせて、コクリと頷く久住さん。

 ……可愛い。

 クラスメイトから彼女になったからか、頬を朱に染める久住さんが以前より別格に可愛く見えた。


「ははぁー、困ったなぁ。何話そうかな~、なんて?」

「……じゃあ、将来の話でもする?」

「久住さん、それはちょっと気が早くない?」

「……むぅ」

「あぁごめん! いいね、将来の話!」


 頬を膨らます久住さんに秒で屈した俺は、久住さんの言うとおり将来の話をすることに。

 ……将来かぁ。

 思えば、久住さんとの家庭が描かれた夢なんて見たことあったっけな。


「そういえばね、私、ウタくんと結婚して幸せな家庭で過ごす夢を見たの?」

「へぇー……、ってマジで!?」


 驚愕して思わず大声が出た。


「おおっ、俺も見たんだよ! 三ヶ月くらい前だけど、見たんだよ!!」

「ホント?」

「あぁ。いやぁ、びっくりしたよ。目が覚めたら颯人の分身みたいなやつに『おはよう、父さん』なんて言われてさ──」

「なにそれ、怖い……」

「あれ? 違うの?」


 俺の見た夢に、久住さんドン引き。

 ていうかよく考えたら怖すぎだろ。どうやって俺と久住さんの間に颯人に超そっくりなやつが生まれるんだよ。


「私が夢に見たのはね……、ウタくんがバレーで有名な選手になってたの」

「俺が、バレーの選手?」


 夢の内容とはいえ、これにはびっくりさせられた。

 中学のときに辞めたバレー。だけど夢の中ではバレーの選手になっていた。


「それでね、私たちの間には女の子がいてね? オリンピックで負けたウタくんに『パパ、がんばったね?』って手作りのメダルを首にかけるの♪」


 楽しそうに語る久住さん。

 ていうか俺、オリンピック出たけど、そこは負けるのね!?


「そしたらね、ウタくん。『美唯、メダル取れたよ?』って言って私にかけてくれたの」

「おうおう。なんかマジで俺ならやってそう。……ホントならそこで、本物のメダルをかけてやりたいところだけどね?」

「ふふっ♪ それから何度も夢を見るの。娘が生まれる前から、娘が成長して高校生になるまで──」


 久住さんの夢の内容は、実に面白かった。

 ご両親に挨拶をするとき、『娘さんを僕にください』と言って下げた頭がテーブルの角に当たった話。

 俺たちが結婚式を挙げて、その二次会で酔った舞香が胸ぐらを掴んで『幸せにしなきゃ〇す』と言われて殴られた話。

 娘が生まれた瞬間に失神した俺が、舞香にはたき起こされる話。

 娘が成長して、反抗期、思春期を迎えて──。激怒した娘に、部活のラケットで股間を殴られる話……。って、ろくな目に遭ってないな、俺!


「ねぇ、ウタくん。正夢って信じる?」


 そして久住さんが投げかけた質問は、夢で見たように未来永劫久住さんに添い遂げられるかどうかを問う大事な質問で、


「もちろん」


 俺はその質問に『イエス』と答えた。


 改めて言うが、俺はやっぱりチキン野郎だ。

 きっと女の子に告白する機会なんて、だけだろう。

 告白されたり、迫られたりなんてハーレム展開なんておそらく一生ないだろう。……だって俺、地味なモブだし。

 だからきっと、久住さんじゃなきゃダメな気がする。

 久住さんと別れたら生きていけないだろうから、嫌われないように、愛されるように必死になってるかも。


 そしてあと一回の告白の機会を、久住さんに使うんだろうな。


「じゃあ……、今からオリンピック目指して、バレー始めてみる?」

「うーん。それもアリかもな?」


 久住さんに促され、突然バレーへの熱が再燃。

 家に帰ったら、さっそく颯人に連絡だな!


「あと……、私のこと『美唯』って、呼んでくれる?」

「……んぇ!?」


 いきなりのことで、変な声が出た。

 今の、正夢とどんな関係が──


 ──美唯、メダル取れたよ?


 ……あっ、言っちゃってるね。未来の俺。


「そんなに驚かれても困るんだけどなぁ。だって私たち──」

「そっ、そうだよな!? 俺たち、付き合ってるからな!!」


 不服そうな顔を浮かべる久住さんを前にそう言ったが、こりゃ逃げられないな。


「じゃ、じゃあ……」


 歩みを止めて、深呼吸して──。

 俺は頬を掻きながら、久住さんの名前を呼ぶ。


「……美唯」

「はい」



【あとがき】


 久しぶりです。

 後日談第二話、久住さんとのデート編①が始まりましたが……、どうでしたか?

 もし「面白かった!」「甘すぎぃ!!」と思ったら、良ければ☆や応援、応援コメント、作品のフォローなどしていただけると嬉しいです!!

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 みなさん何卒よろしくお願いします!!!!


 さて、カクヨムコン6に向けての新作が今日スタートしました!

 タイトルは……。


『彼女いない率99%』の男子校でボッチの僕ですが、最高に気の合う可愛い彼女ができました


 こちらは『不毛な世界で見つけた“理想の花”』をテーマにした、ウソが本当になるまでの、年下後輩と紡ぐ甘々ラブコメとなっております。

 ちなみに予告通り、舞香さんも登場してます!


【URL】

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054935819568


 あと今回の話で『テニスラケット』が出てきましたが……。

 続報をお待ちください!!

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超モテる美少女の恋を手伝うことになった『イケメンの友人キャラ』の俺……って設定ですよね? 緒方 桃 @suou_chemical

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