活動報告:読了作品を語っていく⑪
皆様こんばんは。
本シリーズも⑪作品目に入りました。
本日お送りするのは、本企画随一の「大人派」の一作です。
■宇部 松清 様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896140355
ちなみに性描写ありです。とはいえ、性描写自体にフォーカスしている訳ではないので、成人であれば特に問題なくお読み頂けるかと思います。
さて、まず本作には3名の女性が登場します。
この女性達の感性というか口癖が、主人公葉太の日常感に大きな影響を与えています。キャラクター像とシチュエーションの描写が端正で素晴らしく、過去の恋愛がいったいどんなものだったのかを、痛烈に読者に訴えかけます。言葉を選ぶ必要がある内容ではあるのですが、ご経験された事のある人なら、「うっ」と心ににじみ出てくるものがあると思います。
そして構成も、この三人の女性陣達の印象的な台詞を上手く立ててあるんですね。
まずこうして、葉太の過去の恋愛をしっかりと掘り下げて、葉太という人間が形成される過程を描くことで、葉太の人物像を明確にしている作品はあまり多くなかったように思います。これによって読者の葉太への共感度が向上しており、自然と物語に入っていくことができます。
そして物語が進む中で、ようやく桜子が登場します。しかしこの桜子、どうにもあの女によく似ていて……
これを発端に、過去を振り返る訳ですが、そこで、この物語の冒頭にこそ、作者様によるミスリードが含まれていたことが判明します。なるほど、だからこうだったのか。違和感ないように説明されていたけれど、それってつまり……
ってことは桜子って……
この展開はさすがだと思いました。関係性のつけかたも見事ですが、私が唸ったのは、「冒頭で語られた過去の恋人との日々」が、初見と、後半まで読んだ後では、全く印象が異なるということなのです。嘘は言ってない。けど、「その事実を見逃させる」筆致なのです。そうすると、とてもこの日々が幸福であり悲劇的であったかが分かります。
私もこの手の題材で短編を執筆したことがありましたから、酷く共感した部分でありました。
そして性描写です。お見事。素晴らしいです。
肌の触れ合う感覚など、繊細な感覚を素晴らしい筆致で堪能できます。わかる。わかる。今まで言葉にしようとしていなかったけど、たしかにその感覚を言葉にするなら、それほど適した言葉は他にないだろう。そう唸らされる箇所が沢山ありました。
本作は構成やストーリーテリングもさることながら、非常に筆致が安定しており、クオリティがとても高いです。私は本作を読んだ時、「久しぶりに読書したな」という気持ちになりました。WEB小説を読んだ、ではなく、「紙の本を読んだ」という気分になったのです。
これは作品全体のクオリティが相当に高くないと得られない感覚だと思っています。
本作は数ある葉桜の中でも「屈指の色気」を備えた大人向け作品だと思います。
文藝調で純文学的な側面も持った質の高い本質。とても勉強になる傑作だと思います。
それでは、また。
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