活動報告:読了作品を語っていく⑫

どうも、ゆあんです。

本コーナーも12作目に入りました。今回は60作を超える応募があり、なかなかの規模になってきましたね。

私はまだ全部を拝読できている訳ではないので恐縮ではあるのですが、その中でも「これは見逃せない」という事で拝読に伺った作品があります。


本日はそんな作品です。



■ふづき詩織 様

「葉桜の君に PP」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054896068760



さて、本作はペンギンです。

意味がわからないと思うのですが、ペンギンなのです。気になった人はまずは読みにGO!


ふづき詩織様は前回の自主企画にご参加頂いた折に、同じように「PP」と冠した作品をご執筆下さいました。これは「Page of Penguin」の略だそうで、なるほどその通り、ペンギンが出てくるお話だったのです。


「海が太陽のきらり PP」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891956421



そして今作もやってくれました、「葉桜の君に PP」。今回は「Penguin Penta」の略だそう。俗に言う「ペンギンレギュレーション」を遵守した作品だったのです!



本作の主人公は、ペンギンちゃんです。しかもクソイケメンのペンギンです。

このペンギンの中でもリーダー格である個体が、「桜子」のぬくもりを求めて冒険活劇(!?)するのが本作。本人たちの行動や考えもドラマチックでしかもポエミーなのですが、実際にはこのペンギンの行動によって周囲の人間が如何に翻弄されているのかが中心に描かれます。本人にとってはとてつもないスケールながらも、所詮ペンギンのスケールというシュールさというかジョーク感がたまりません。

これはあれですね、トイ・ストーリー的な(おもちゃ本人達の壮大な、でもおもちゃなスケールでしかない物語がシュールでかわいい)面白さを感じました。非常に微笑ましかったです。



本作での筆致的な特徴を上げると、「日記形式で謎が明らかになっていく」点と、「超凝ったルビ使い」だと思います。


前者では、このペンギンたちに関わることで職員のメンタルがどのようになってしまったのかが描かれています。これだけ見ると「ただ世話が大変なんだな」としか思えないのですが、物語が進むにつれ、ペンギンの生体や、ペンギン本人達のドラマが描かれることで「なぜそうなってしまったのか」がわかるようになってきます。このあたりのペンギンに対する愛を私は感じましたね。ペンギンの生体にもちょっと詳しくなれる感じがまたGood。


そして後者では、ペンギンの会話に対し、ルビ振りが炸裂します。これがもう本当に面白い。ペンギン達の発音も毎回ひねりがあるし、それがリピートされるだけでも面白いのに、会話内容が妙にセンチメンタルだったりポエミーだったりして、胸に来るのです。笑いとともに。



ルビ振り機能はカクヨムの中でも重要な機能の一つです。これで遊び倒すギャグ作品というのがカクヨムの中にもあって、作者のアイディア次第でそれだけで笑いを取れる必殺技になります。


永遠なる絶対零度エターナルフォースブリザード!』

とか、

『よくお笹馴染みで元彼女の前で、あの女乳だけの尻軽バカの話ができるわね』

とか、

『この◯◯◯◯◯ダメ、ゼッタイ。を打てば、すぐに気持ちよくなるわ♡』

とか、

parusaあなたは ela tenculuir tu この世界のとはquar deltesonarta異なる次元から来た pesonica人間ですね?』→異世界語だと!?

とか。



あ、話が脱線しますけど、千葉の地方にはルビないと読めない地方、結構あります。

神々廻ししば

飯山満はさま

北方ぼっけ

廿五里ついへいじ

・安食トあじきぼっくい



地方限定の読み方にルビをふったり、造語を作ったり。そういう機能は世界観を説明するに非常に重要です。これを真面目に使うもよし、これだけで笑っちゃうような遊びもよし。


本作のペンギンの会話は、これが絶妙なバランスで実現されています。しつこくないし、しかししっかりとハートに来る感じというのが。思わず笑顔になること請け合いです。


作品内容もハートウォーミングでいいなと思いました。ジョーク部分を取り除けば児童書にも通用しそうな素敵さがあり、しかし現実を知っている大人には「ぷぷぷ」というバランスも見事。


テーマとして少々重くなりガチな「葉桜の君に」を、軽快なトーンでお届けしてくれる素敵作品でした。

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