四 勇者



 昔々、今から八千年ともう少しくらい前のことです。深い闇に覆われた、後にヴェルトルートと呼ばれる地に、ひとりの若者がおりました。彼は貧しい石工でしたが誰よりも優しく勇敢で、皆に慕われておりました。彼の周りにはいつも笑顔があふれていましたが、しかしその時、世界は決して人々が笑って暮らせる場所ではありませんでした。そう、終末の時代です。


 地上には黒い毛並みに紅色の瞳をした獣が跋扈ばっこし、それらが撒き散らす淀んだ空気に触れると、人々は突然怒り狂ったり、嘆き悲しんだり、気がおかしくなって愛する人を傷つけたりしました。


 これを悲しく思った神々は、神殿の中でも特別美しい心をもった神官に神託を下されました。


 創造神たる光の神の最初の子供達、火の神、水の神、大気の神、土の神。そして彼らの弟妹である渦の神、花の神。六柱の神々がそれぞれ一人ずつ選んだ「剣の仲間」達──つまり火の勇者、水の神官、気の魔法使い、土の騎士、渦の槍使い、花の弓使いの六人で、淀みの根源である魔王を打ち倒すよう仰られたのです。


 勇者に選ばれたのはあの勇敢な若者でした。彼はその火のようにあたたかい笑顔と炎のように勇敢な心で仲間を導き、幾多の冒険を重ねて、ついにその聖剣で魔王を倒したのです。


 そうして世界は光を取り戻し、地上は再び人々が笑顔で暮らせる場所になりました。勇者とその仲間達が、世界を救ったのです。





 神官の語る神話をうんうんと頷きながら聞いていると、彼は少し意外そうな顔で言った。

「おや、黎明の勇者の伝説はご存知なんですね。では、それからおよそ四百年ごとに魔王と呼ばれる存在が現れ、その都度勇者に討伐されてきたことは?」


 転移してきた部屋には小さな寝室が隣接していて、狼はそこの寝台に横になったまま頷いた。気分は悪くなかったが、血を増やす薬を飲むまで起き上がるなとうるさく言われたのだ。

「四百年ごとってのは知らなかったが、他にもいるのは知ってる」

 神官は狼の返答に「そうですか」とひとつ頷くと、少しだけ姿勢を正し、微笑んで厳かな声で言った。


「あなたは戦いと守護を司る火の女神フランヴェールによって、二十三代目の聖剣の勇者として選ばれたのです」


 かくして、その使命は優しげな神の代弁者によってひどくあっさりと告げられた。寝台に押し込められているこの状況は若干情けないものの、それは幼い頃の狼が幾度も夢見てきた瞬間と言って良かった。


 しかしなぜだろうか、狼の胸の内に想像していたような深い喜びは湧き上がらなかった。彼は既に自分でも不思議なくらい神官の言葉を信頼していたが、それでも勇者という響きはどこか現実味がなく、曖昧で噛み砕けないその感覚に、夢が叶うという期待はほんの僅か──あとは重たい不安と、先の見えない恐怖が纏わりついているばかりだった。


 狼は自分がなんだか話についていけそうもないのをぼんやりと感じたが、とにかく聞くだけでも聞こうと寝台の中で膝を立て、少し体を丸めるとじっと神官を見つめた。


「──あなたは『剣の仲間』、即ちここにいる魔法使いと神官である私、それから賢者と吟遊詩人と共に、魔王を打ち倒す旅に出なければなりません」

「……賢者と、吟遊詩人?」

「ええ。どうかしましたか?」

 不思議そうに尋ねられてハッとなり、慌てて首を振る。


「……あ、いや。じゃあ、聖剣ってもしかして本当に存在するのか?」

「勿論です。神殿の宝物庫に保管されていたものを持ってきてあります。もう少し体調が良くなったらお渡ししますので、楽しみにしておいてくださいね」

「宝物庫か……なんか現実的というか、岩に刺さってるとかじゃないんだな」

「伝承によると、はじめは岩に刺さっていたものを勇者だけが引き抜けたとされていますが、魔王を倒して持ち帰ってきた剣をまた岩に戻したりはしませんから……ところで魔法使い、あなたは一体何をしているのですか?」


「勇者は……この花が、好きだから」

 白ローブのエルフはなぜか、石の床でも変わらず足元に咲いている半透明の花を両手いっぱいに摘み取り、それを寝台横に置いてある水差しへせっせと生けていた。重い気持ちのままそちらへ目を向けた狼は、その花に水って必要なんだろうかと漠然と思う。


「魔法使い。それは水差しですから、花を生けられては勇者が水を飲めませんよ」

 魔法使いは何も言わなかったが、長い耳が今度はあからさまにしなりとしたので、狼は少し心に明るさを取り戻して苦笑した。エルフというくらいだから実は三百歳だとかいうのではないかと思っていたが、段々と狼よりも年下なのではという気がしてきていた。


「あー、いや、いいよそのままで。水筒持ってるし。花、ありがとな」

「……うん」

「……後で花器に生け替えましょうか」

「そうだな」


 深刻な空気をいちいち壊してくる妖精の挙動に少し張り詰めていた心が緩んだ頃、狭くて薄暗い寝室に丁度良いタイミングでノックの音が響いた。


「はい、どうぞ」

 神官が答えると、ギィと軋みを上げて開いた扉の陰から小さな金色の頭がひょこりと現れた。また金の髪だ。しかもこちらはきらりと濃い色に光る豪華な金。


「お話し中ごめんね? 薬ができたから持ってきたよ」

 随分と小柄な少年、いや少女か──その声は爽やかで少し高めの少年に聞こえたが、髪を編んでリボンを結んだその姿がどう見ても少女だったので、狼はその子供を思わずまじまじと見つめた。


 綺麗な薄緑色のローブに飾り帯を巻いた彼女、彼、彼女……はどうやら盲目なようだった。というのも、十二、三歳に見えるその子は、その可憐な雰囲気に似合わない目隠しのような黒い布を目元に巻いていたからだ。しかし薬の乗った盆を持った子供は、慣れているのか杖もなしに危なげなく寝台へ歩み寄って神官に盆を手渡すと、狼に向かってにっこりと口角を上げた。


「はじめまして勇者、僕は吟遊詩人だよ。ようやく君に会えて嬉しいな。これからよろしくね」

「あ、ああ。よろしく」


 ここへきて初めてきちんとした挨拶を受けた気がする。「僕」なので男だろうか。吟遊詩人ということは、この子も旅の仲間だよな……狼はそう考えて困惑した。こんな子供を魔王のところまで連れて行くのか?


「なあ、お前も一緒に旅に出るんだよな?」

「そうだけど……ああこれ? だいじょぶだいじょぶ、これ、見えないわけじゃないから」


 狼の言葉をどう受け取ったのか、吟遊詩人は鈴を転がすような明るい笑い声を上げると、目を隠している布に指を引っ掛けて首元まで押し下げた。下から現れたのは、驚くほど鮮やかな緑色をした瞳だ。少し遠くを見るようにキラキラと笑んでいる。顔立ちはやはり可愛らしかったが視線の色はすっきりと凛々しく、目元が見えると思っていたよりも大人に近い歳の少年に見える。


「あー、焦点が合ってないかな? でもこれね、見えないんじゃなくて見えすぎるんだよ。父方の親戚みんなそうなんだけど、呪布じゅふ巻いとかないと壁の向こうまでどこまでも見えちゃうの。だから普通にしてると近くがよく見えなくってさ、すごい不便だよね? 体質に関わるナントカ魔法って名前があった気がするんだけど、何だったかなあ……」

 少しはしゃいだような声が滑らかに喋る。どうやらかなり特殊な能力を持っているらしい吟遊詩人は、かなり明るい人物でもあるようだった。こんな少年がいればさぞや旅は楽しくなるだろうと思ったが、狼は首を振ると体を起こし、神官達に向き直った。


「勇者、まだ起き上がっては」

「どうせ薬も飲むんだろう? それに、これはちゃんと聞いておきたいんだ」

 そして狼は人差し指の先で頰をかくと、少し顎を引いておずおずと尋ねた。

「あのさ、さっきから気になってたんだが、賢者っていうのは……何か凄い魔法を修めてたりする人のことなのか?」


 神官が不思議そうな顔をする。

「魔法? いえ、賢者は賢者ですよ。この賢者の塔の最上階に住んでいて、この世のありとあらゆる知識を手に入れたと言われている、凄い方です」

「ここ、賢者の塔っていうのか……いや、賢者ってあの黒いローブの人だろ? さっきはほとんど見えなかったんだが……もしかしてとんでもない年齢のご老人だったりしないよな」

 背が曲がっている様子はなかったが、顔はフードを被っていたし、体格はローブで隠れていた。つまり油断はできない。


「いえ、歳は三十かそこらだったはずですよ」

「……そりゃ良かった」

「お年寄りに長旅は難しいですからね」

「じゃあ吟遊詩人はさ……こう、魔法の歌で仲間の戦いを援護したりできる職業だったりするのか?」


 尋ねると、吟遊詩人がにっこりと首を振った。

「ううん、たぶん物語を歌に乗せて語る人のことだと思う」

「そうか、そうだよな……伝説だと仲間はいつも六人だろ? もう一人は?」

「ああ、その選定については神託の際に知ったのですが、渦の神は今回お休みなのだそうです」

「……お休み?」

「お休み」

 それ以上語ろうとしない神官に、狼は首を捻って吟遊詩人の方を見た。しかし少年は苦笑いになって首を振った。勇者は難しい顔になると、少し考えて、迷って、やはり問うた。


「なあ……魔王を倒しに行くんだろ? どうも少し、戦える人間が少なくはないか?」


 神官は一瞬きょとんとすると、くるりと周囲を見回して頷いた。

「確かに、言われてみれば少ないかもしれませんね。私は癒しと浄化しかできませんし……でも魔法使いは白ローブなのですから、魔法の使い手として相当な鍛錬を積んでいるのでは?」


 皆に視線を向けられた魔法使いは、小さな幻の花を片手にゆったりと首を振った。

「塔では……喋るお花の研究をしていたよ。それから、窓の外の星も見ていた」

「おやまあ」

「……戦えない仲間はいらない?」

 吟遊詩人が少し悲しそうな顔になったので、このキラキラ光っているエルフと「研究」という言葉のちぐはぐさに困惑していた狼は慌てて首をぶんぶんと振った。

「いや! そんなことない! そんなことないが……俺は一介の狩人でしかなくて、お前達全員を背に庇って守れるかと言われると、自信がない」

 緑の目がきょとんと丸くなって、そして嬉しそうににっこりする。

「なんだ、そんなことか。君って優しいんだね。そうだね……まあ、なんとかなるんじゃないかな? なにせ神託なんだし……そうだなあ、ええと……うん。とりあえず薬飲む?」

「……そうだな」


 どうも少し誤魔化された気がしたし、頷くと不安が増した気もしたが、とりあえずこの問題は先送りにすることにした。差し出された盆を受け取って膝に乗せる。縁取りの装飾が美しい銀の盆の上に、小さな杯が三つ。薬を持ってきた吟遊詩人が中身を教えてくれた。


「左から淀障てんしょう解毒剤、造血剤、疲労回復薬だって。全部一度に飲んでも大丈夫なようにしてあるって賢者は言ってたよ」

「……え?」

「ありがとうございます。淀障解毒はもう終わっていますので、まずは造血剤を飲みましょうか、勇者……どうしました?」

「なあ、俺が森で魔法使いにもらった薬って、タンポポみたいな鮮やかな黄色に光ってたんだが……」


 目の前に並ぶ薬は、どれも少しずつ色合いは違うもののくすんだ緑色をしていて、どれひとつとして光を放っているものはない。狼はじわじわと嫌な予感を抱きながら神官に目をやった。俺は何を飲まされたんだ?

「黄色……ですか。いえ、一応様子を見ておきますが、おそらく大丈夫だと思いますよ」

「……ほんとか?」

「ええまあ、魔法薬の類は個人の魔力の質によって多少色が変わることもあるので、色についてはそこまで心配いらない、はずなのですが……鮮やかな黄色というのは……いえ、血止めの軟膏も変わった色でしたが効能に問題はなさそうでしたので……」

「効果は、確認してあるから……大丈夫だよ。飲むと、とても幸せになれる」

 自信なさげになってきた神官を安心させるように、魔法使いが頷く。

「まあ、お前らがそう言うなら……体調は悪くないし」


 狼が渋々真ん中の杯を手に取ると、神官は少し困り顔のまま微笑んで「もし具合が悪くなったらすぐに言ってくださいね」と言った。それに頷いて、手の中の杯を改めてまじまじと見る。

「ガラスか……貴重なものだと思ってたが、こんなに普通に使われるんだな。窓にもあんなに大きいのが嵌まってるし……」

 感心してから、くいっと薬を一気に煽る──狼にとって胸が潰れるような出来事が起きたのは、それがきっかけだった。


 恥を忍んで釈明するなら、口に含んだ薬があまりに苦かったのだ。毒かと思うような酷い味を反射的に吐き出しそうになった狼は、咄嗟にそれをこらえた拍子に、今は「力」の制御が上手く利かないことをすっかり忘れて拳を握りしめた。透き通った割れやすいガラスの杯が派手な音を立てて手の中で砕け散る。ハッと視線を向けると、皆が目を丸くして狼を見ていた。


 一瞬故郷の村人に囲まれているような錯覚に陥って、彼は思わず息を止めた。後ずさるように寝台の頭板へ手をつくと、自分でも信じたくないことにバキバキと大きな音が鳴って木が裂けた。最悪の状況だった。狼はどうしようもなくなって、視線を避けるように弱々しく首を振ると言葉にならない声を漏らした。


 その、後のことだった。


「勇者、お怪我を」

 顔を心配で曇らせながら身を乗り出そうとした神官の前に、立ち上がった魔法使いがさっと片腕を出す。

「──危ないから、下がって」

 静かな囁き声が、狭い部屋で妙にはっきりと響いて聞こえた。


 腹を殴りつけられたような気持ちになって、狼はよろよろと背後の壁に寄りかかった。少しずつ周囲の音が遠くなって、じわりと視界が歪む。自分にも仲間ができるかもしれないというほんの僅かな期待が、脆く崩れ砂になってゆく。


 しかしその時、なぜか寝台に乗り上げた魔法使いが彼の右手を掴んだので、狼は慌てて妖精の細い腕を折らないことに全神経を集中させた。手首をひっくり返されて、白い指が手のひらからガラスの破片を引き抜いてゆく。風変わりなエルフは、血に汚れた手でたったいま寝台を破壊したばかりの狼の左手も捕まえると、震える両手を包むように握り込んだ。


「大丈夫……落ち着いて、ゆっくり息をして。魔力が少し……揺れているだけだから、すぐに治まる……ゆっくり、息をして」


 青いような銀色なような不思議な色の瞳がひたと狼の目を見つめていた。どれだけ奥まで覗き込んでもそこには少しの恐怖も嫌悪もなく、ただ優しく狼を落ち着かせようとする凪いだ色だけがあった。


 自分の目で見ているものなのに、すぐには信じられなかった。胸にぎっしり詰まった何かがこぼれ出すように、狼の目の端に涙が滲んだ。


「大丈夫、泣かないで……ゆっくり、星を数えてごらん。ひとつ、ふたつ……」

 狼は握りしめられた手をじっと見つめ、潰れそうに痛む胸で息を吸って、吐いた。今まで反対向きの力をぶつけるようにして押し殺していた怪力が、初めてただ穏やかに静まっていくのを感じた。力と同時に、狼の心もだ。


 魔力が揺れているだけ……それは、本当だろうか?


 どうか消えてくれと何度も願ったこの力は、もしかして、魔法使いの足元に花を咲かせたり、神官が傷を癒したりする時の力と同じものなのだろうか。もしも、もしも本当にそうだとしたら、俺は、俺は──


 そして、あれこれ壊してしまったことを繰り返し詫びて手の傷を癒してもらった狼は、ひとつ深呼吸するとシーツの上に視線を落とし、勇気を振り絞って尋ねた。

「なあ、あのさ……魔獣の周りに黒い靄みたいなのが纏わりついて見えるのって、何か知らないか?」

 それはあまりに唐突だったが、恐れと願いのこもった狼の問いかけに顔をしかめる者はなかった。それどころか吟遊詩人はきょとんと首を傾げると、あっさりこう言った。

「魔獣って、時々森から出てくるあの黒いやつだよね? 普通に見えるでしょ。え、見えない人もいるの?」


 神官が不思議そうな顔でそれに答える。

「私は片手で数えられるほどしか魔獣を見たことがありませんが……少なくとも見えたことがありませんね。あまり聞いたこともありませんけれど、何か役に立つかもしれません。賢者に確認してみましょうか」

「えっ、神官には見えてないの? 目が悪いとかじゃなくて? うわ、衝撃的なんだけど……ありゃ、どしたの勇者? もしかして泣いてる?」

「……泣いてない」

「大きな怪我が治ったばかりですし、疲れが出たのでしょう。少しお休みなさい、夕食の頃にはまた様子を見に来ますから。ほら部屋を出ますよ、妖精さん達」



  僕は妖精じゃないよ


  でもフェアリのように可愛らしいですよ


  ふふ、ありがと


  お花……置いていくね


  それはもうたくさんあるし、いいんじゃないかなあ

  ていうか、その気持ち悪い蔓草みたいなのは何なの?

  ちょっと動いてるよね?



 扉が閉まる音がして、賑やかな声が遠ざかってゆく。狼はうつ伏せになるとぎゅっと枕に顔を埋めた。静かになった部屋で目を閉じたまま、先程の彼らの言葉を一つひとつ思い返して、深く息をついた。うっかり泣いてしまって、情けない。


 情けないが、救われた。


 きっと狼のことを一番に恐れていたのは村人の誰でもなく、狼自身だったのだろう。ところ変われば怖がられない可能性なんて一度も考えたことがなくて、世界のどこかにはそのままの彼を受け入れてくれる人がいるなんて思ってもみなくて、ただひたすら「変わらなければ」「他で補わなければ」とそればかりだった。


 でも……仲間ができるかもしれない。こんなに突然。こんなに簡単に。


 勇者の物語を読んでいた時、特に子供の頃は、自分がそれに選ばれたらどれほど良いだろうとよく考えていた。冒険をして、敵を倒して、世界を救う。きっと楽しいだろうと思っていた。しかしいざそんな状況になってみると、一番に感じたのは己の自信のなさと、重い使命に対する重圧だった。


 それでも、俺は勇者になろう──狼はそう思った。


 俺は弱くて、小さくて、世界のことなんて何もわかっていないけれど、あいつらが「仲間」になるのなら、俺はどこまでだって強くなれる気がする。あいつらが笑っていられる場所を守るためなら、命だって懸けられる気がする。


 世界は思っていたよりもずっと広くて、ずっと美しかったみたいだ。この手にできることもできないことも、全部まとめて引き受けよう。仲間と一緒に、世界を救おう。


 そう決意すると勇者は目を閉じて、仲間が迎えに来るまでのしばしの間、穏やかな眠りに落ちたのだった。





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