北魏14 拓跋嗣侵攻11 

拓跋嗣たくばつしぎょうから、更に増援を出す。

1万人余りが白沙口はくさこうから黄河こうがを渡り、

濮陽ぼくよう城の南、寒泉かんせんという地に砦を築いた。


建康けんこうからの指示が飛ぶ。


項城こうじょう北魏ほくぎ軍に隣接しており、

 小勢で守れる地ではない。


 劉粹りゅうすいに命じよ、

 項城を守る高道瑾こうどうきんを引き上げさせ、

 壽陽じゅように帰還させよ、と。


 もし沈叔狸しんしゅくりがすでに

 進軍してしまっておれば、

 この者にも帰還命令の使者を飛ばせ」


が、劉粹は却下した。

北魏は虎牢ころうを攻め落とせないため、

未だ南下できていない状態。

ここで下手に項城を手放してしまえば、

淮水わいすい上流域の人々が避難先を失う。

また沈叔狸についても、

すでに肥口ひこうに駐屯済みであった。

ここも下手に撤収させるべきではない。


この頃、許昌きょしょうから逃げ延びてきた李元德りげんとくが、

残った二百人をまとめ、項城に帰還。

劉粹は李元德に高道瑾のサポートを命じる。

合わせて朝廷には、その敗北の罪を

不問とするよう請願をなす。

この請願は受理された。




嗣又於鄴遣萬餘人從白沙口過河,於濮陽城南寒泉築壘。朝議以:「項城去虜不遠,非輕軍所抗,使劉粹召高道瑾還壽陽。若沈叔狸已進,亦宜且追。」粹以虜攻虎牢,未復南向,若便攝軍捨項城,則淮西諸郡,無所憑依。沈叔狸已頓肥口,又不宜便退。時李元德率散卒二百人至項,劉粹使助高道瑾戍守,請宥其奔敗之罪,朝議並許之。


嗣は又た鄴にて萬餘人を遣り白沙口より河を過らしめ、濮陽城の南の寒泉にて壘を築かしむ。朝議は以えらく:「項城は虜より去ること遠からざれば、輕軍に抗せる所に非ず。劉粹をして高道瑾を召じ壽陽に還ぜしむべし。若し沈叔狸の已に進みたらば、亦た宜しく且つ追うべし」と。粹は虜の虎牢を攻め、未だ復た南に向かわざるを以て、若し便ち軍を攝い項城を捨つらば、則ち淮西の諸郡に憑依せる所無く、沈叔狸の已に肥口に頓ざば、又た宜しく便ち退るべしとせず。時に李元德は散卒二百人を率い項に至らば、劉粹は高道瑾が戍守を助せしめ、其の奔敗の罪を宥ぜんと請い、朝議は並べて之を許す。


(宋書95-14_衰亡)




李元徳の罪が不問とされたことに安堵しました。いや、無茶でしょあれを守りきれって……。


寿春に駐屯する劉粋のところには、当たり前ですが建康よりも精度の高い情報が届いているのでしょうね。かつ、この人は結構様々な局面で重要な任務を得たりもしています。ここでもわりと劉宋の対北魏戦線総司令くらいの位置にはついているくさい。なんだかんだで劉裕を支える名将のひとりなんですが、いまいち目立たないんですよねー。やっぱり劉裕と、その補佐が劉穆之りゅうぼくしで、トップに劉氏が溢れかえっちゃってるのがあかんよね。しかもどいつもこいつも親族じゃない地獄。

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