陶潜10 命子詩 上   

陶潜とうせん、子らへの思いを綴った手紙の他、

詩という形でも彼らに思いを伝える。

「命子」という題だ。



悠悠我祖 爰自陶唐

邈爲虞賓 歴世垂光

 偉大なる、我らが始祖。

 それは陶唐とうとうぎょう王に始まる。

 王の息子、丹朱たんしゅしゅん王の食客となり、

 以降、その栄光を世に示した。


御龍勤夏 豕韋翼商

穆穆司徒 厥族以昌

 の国では御龍ぎょりゅう氏として仕えられ、

 いんの国では豕韋たくい氏として活躍し、

 そしてしゅうの国にあっては、

 陶叔とうしゅく様が司徒となり、

 一族はますます栄えたのだ。


紛紜戰國 漠漠衰周

鳳隱于林 幽人在丘

逸虬撓雲 奔鯨駭流

天集有漢 眷予愍侯

 しかし乱世となり、周の徳は衰えた。

 鳳凰は林に身を潜め、

 隠者は山野に佇まう。

 はねたミズチは雲の上に駆け巡り、

 クジラは大きな波を起こし、

 人々を驚かす。

 その後天意がかんのもとに集ったとき、

 劉邦りゅうほう様に従う、陶舎とうしゃ様があった。


於赫愍侯 運當攀龍

撫劍夙邁 顯茲武功

參誓山河 啓土開封

亹亹丞相 允迪前蹤

 あぁ、偉大なるかな、陶舎様。

 剣を佩いて劉邦様を大いに助け、

 多くの武功をお上げになった。

 皇帝への即位に伴い、

 陶舎様は諸侯に列された。

 そしてお子の陶青とうせい様も、

 よく父上の功業を継がれ、

 ついには、丞相にまで至ったのだ。




又爲命子詩以貽之曰:

悠悠我祖,爰自陶唐。邈爲虞賓,歴世垂光。御龍勤夏,豕韋翼商。穆穆司徒,厥族以昌。紛紜戰國,漠漠衰周。鳳隱于林,幽人在丘。逸虬撓雲,奔鯨駭流。天集有漢,眷予愍侯。於赫愍侯,運當攀龍。撫劍夙邁,顯茲武功。參誓山河,啓土開封。亹亹丞相,允迪前蹤。


(宋書93-28_文学)




「同じ名字ならご先祖カウント」炸裂。そして春秋戦国の時期に活躍した陶氏がいないことを「高士は身を潜めるものさ」と言い切る、この。なんだってありヤーン!


まあ、この辺のご先祖語り聞いてると、新唐書とかにつく宰相世家とかにおける系譜の胡散臭さも、むしろ「そのように語るのが孝」くらいの認識になってくるのだろうなあ、とは思うのです。

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