陶潜4  帰去来兮辞 下 

歸去來兮 請息交而絶遊

世與我以相遺 復駕言兮焉求

 さあ、帰ろうか。

 交流をやめ、縁を断ち。

 世間は私に、あまりにも合わぬ。

 もう二度と、栄職なぞ求むまい。


説親戚之情話 樂琴書以消憂

農人告余以上春 將有事于西疇

 親族の噂話に喜び、

 琴や書を楽しめば、憂いも消える。

 農夫らが私に、春の訪れを告げる。

 では私も、西のかたで、ひとつ、

 農事を始めるとしよう。

 

或命巾車 或棹扁舟

既窈窕以窮壑 亦崎嶇而經丘

 あるいはボロの車を引かせて、

 あるいはボロの船に棹さし、

 深い渓谷をさまよったり、

 峰を越え、丘に登ったりする。


木欣欣以向榮 泉涓涓而始流

善萬物之得時 感吾生之行休

 木々は実に嬉しそうに枝葉を茂らせ、

 泉はこんこんと涌きいでる。

 あらゆるものが、今を謳歌している。

 なんとも素晴らしきことである。

 そのような中、我が生もまた、

 長らくの安らぎに近づくのを感じる。


已矣乎 寓形宇内復幾時

奚不委心任去留 胡爲遑遑欲何之

 どうしようもないことだ。

 この世のすべてが、いつまでも

 今という時を保てるはずがない。

 ならば、心の赴くままあちこちを

 訪ねずになどおれようか。

 いたずらにアワアワとしてみて、

 何を手に入れたいというのだ。


富貴非吾願 帝鄕不可期

懷良辰以孤往 或植杖而耘耔

 富貴は我が願わざるところ、

 と言って仙人になりたいわけでもない。

 良き日柄を胸に、ひとり彷徨い、

 あるいは、杖をそのあたりに刺し、

 草刈りに勤しんだりする。


登東臯以舒嘯 臨淸流而賦詩

聊乘化以歸盡 樂夫天命復奚疑

 東の丘に登っては歌を歌い、

 せせらぎの側で、詩を詠んでもみる。

 この大いなる、静謐なる変化に抱かれ、

 私もまた自然の中に帰りたい。

 天命を受け入れ、楽しむことに、

 何を疑う意味があるだろうか。




歸去來兮,請息交而絶遊。世與我以相遺,復駕言兮焉求。説親戚之情話,樂琴書以消憂。農人告余以上春,將有事于西疇。或命巾車,或棹扁舟。既窈窕以窮壑,亦崎嶇而經丘。木欣欣以向榮,泉涓涓而始流。善萬物之得時,感吾生之行休。

已矣乎,寓形宇内復幾時。奚不委心任去留,胡爲遑遑欲何之。富貴非吾願,帝鄕不可期。懷良辰以孤往,或植杖而耘耔。登東臯以舒嘯,臨淸流而賦詩。聊乘化以歸盡,樂夫天命復奚疑。


(宋書93-21_文学)




はあ、しゅごいね……(しゅごい)


句形が割とまちまちではあるんですが、平仄を踏まえられると少しは違うんでしょうかね(あまり踏み込む気はない)。

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