戴顒4  宮廷音楽    

劉裕りゅうゆうの末っ子、劉義季りゅうぎき京口けいこうに赴任。

その副官であった張邵ちょうしょう戴顒たいぎょうと姻戚だ。

なので戴顒、黃鵠山こうこくさんにて歓待。


黃鵠山の北には竹林に囲まれた庵があり、

山林渓流の様子は非常に美しい。

渓流のそばで戴顒はゆったりとし、

劉義季、そのたたずまいにうっとり。


どセレブの来訪でこそあったが、

戴顒、別に着飾ろうともせず、

普段通りの服装で出迎えた。


ただ劉義季のために演奏は披露する。

遊絃ゆうげん」「廣陵こうりょう」「止息しそく」の三曲。

いずれも戴顒によるアレンジがなされ、

まるで新しい曲のようであった。


おい、義季ばっかりズルいぞ!

そう言ったかどうかはともかく、

劉義隆りゅうぎりゅうもまた、

戴顒に会いたくて仕方ない。

なので側近の張敷ちょうふに言う。

なお張敷は張劭の息子。

かれの兄が戴顒の娘を娶っている。


「私が東方に向かう時には、

 か・な・ら・ず黃鵠山での宴会を

 スケジュールに組み込むように!」


うーんこの。


劉義隆、戴顒の音が好きなあまり、

宮廷音楽家の一部を戴顒に貸し与えた。

長期契約であったため、

ほとんどあげたに等しかったようだ。



やがて戴顒は「何嘗かしょう」「白鵠はくこう」の

二曲を合体させ、一曲とした。

そのタイトルを「淸曠せいこう」とした。




衡陽王義季鎭京口,長史張邵與顒姻通,迎來止黃鵠山。山北有竹林精舍,林澗甚美,顒憩于此澗,義季亟從之遊,顒服其野服,不改常度。爲義季鼓琴,並新聲變曲,其三調遊絃、廣陵、止息之流,皆與世異。太祖毎欲見之,嘗謂黃門侍郎張敷曰:「吾東巡之日,當讌戴公山也。」以其好音,長給正聲伎一部。顒合何嘗、白鵠二聲,以爲一調,號爲淸曠。


衡陽王の義季の京口に鎭ぜるに、長史の張邵と顒は姻通せば、迎え來て黃鵠山に止る。山の北には竹林精舍有り、林澗は甚だ美しく、顒は此の澗に憩い、義季は之に從いて遊を亟め、顒は其の野服に服すも、常の度を改めず。義季が爲に鼓琴し、並べて新聲變曲し、其の三調、遊絃、廣陵、止息の流は、皆な與に世に異とさる。太祖は毎に之に見えんと欲し、嘗て黃門侍郎の張敷に謂いて曰く:「吾が東巡の日にては、當に戴公が山に讌ずべきなり」と。其の音を好めるを以て、長らく正聲の伎の一部を給す。顒は何嘗、白鵠の二聲を合せ、以て一調と爲し、號して淸曠と爲す。


(宋書93-4_巧芸)

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