卜天與 文帝に殉じる
父は
餘杭に赴任してきた
徐赤特は
命令違反を犯し、
残された徐赤特の部隊の中にあって、
卜名祖の武は耳に届いていたらしく、
劉裕は自らの部隊の長に転属させる。
その後劉裕のなした軍役に従事。
功績より関中侯への封爵を受け、
二つの県の県令を歴任した。
息子である卜天與は
弓の腕前、威力で知られており、
またいかめしいその容貌は、
たとえ笑ったとしても
大きく相好を崩すことがなかった。
息子であったことからやはり厚遇、
自らの息子たちの弓術指南とした。
その任にあること数年、
正式な官位につけられはしないものの、
つまりこれは、きな臭くなってきた
劉義隆の周辺を守るための、
臨時の護衛隊、という役回りだろう。
そしてやってくる、
いきなりの劉劭による襲撃を受け、
皇太子を前に平伏してしまった。
が、卜天與は鎧を着こまず、
ただ刀と弓を持ち、
大急ぎで周辺のものをかき集め、
劉劭のもとに馳せ参じる。
その様子を見た徐罕が言う。
「こ、皇太子殿下のお成りなのだぞ?
そなた、何をしようというのだ?」
はぁ? おまえアホか!
卜天與、大いに怒鳴る。
「殿下が何をお考えかなど、
わかり切ったことではないか!
何を今更抜かしておるのだ、
それがわかっておりながら
見過ごそうというのだぞ!
貴様も賊徒と何ら変わらんわ!」
そしてその弓で
劉劭の率いる賊徒を攻撃。
何人かは射倒したのだが、
しょせんはそこまで。
卜天與には反撃の手が伸び、
その両腕は切り飛ばされ、
床に押し倒され、殺された。
この時卜天與と共に戦った
同じく殺された。
命を賭して戦った彼らの墓所に
自ら出向き、墓前にて号泣。
張泓之らには郡太守の地位が追贈、
卜天與の家には永続的な
食糧の支給がなされるようになった。
卜天與,吳興餘杭人也。父名祖,有勇幹,徐赤特為餘杭令,祖依隨之。赤特死,高祖聞其有幹力,召補隊主,從征伐,封關中侯,歷二縣令。天與善射,弓力兼倍,容貌嚴正,笑不解顏。太祖以其舊將子,使教皇子射。居累年,以白衣領東掖防閤隊。元凶入弒,事變倉卒,舊將羅訓、徐罕皆望風屈附,天與不暇被甲,執刀持弓,疾呼左右出戰。徐罕曰:「殿下入,汝欲何為?」天與罵曰:「殿下常來,云何即時方作此語。只汝是賊。」手射賊劭於東堂,幾中。逆徒擊之,臂斷倒地,乃見殺。其隊將張泓之、朱道欽、陳滿與天與同出拒戰,並死。世祖即位,車駕臨哭。泓之等各贈郡守,給天與家長稟。
卜天與、吳興の餘杭の人なり。父は名祖、勇幹有り、徐赤特の餘杭令為るに、祖は之に依隨す。赤特の死せるに、高祖は其の幹力有せるを聞き、召し隊主に補し、征伐に從い、關中侯に封ぜられ、二縣令を歷す。天與は射に善く、弓力は倍を兼ね、容貌は嚴正にして笑みても顏を解かず。太祖は其の舊將が子なるを以て、皇子に射を教わしむ。累年居し、白衣を以て東掖防閤隊を領す。元凶の入りて弒さんとせるに、事の變わりたるは倉卒にして、舊將の羅訓、徐罕は皆な風に望みて屈附せど、天與は甲を被る暇なく、刀を執り弓を持ち、左右を疾呼し戰に出づ。徐罕は曰く:「殿下の入りたるに、汝は何を為さんと欲さんか?」と。天與は罵りて曰く:「殿下の常に來たるに、云何んぞ即時に方に此の語を作さんか。只だ汝は是れ賊なり」と。手ずから賊や劭を東堂に射し、幾つかは中る。逆徒は之を擊ち、臂を斷ち地に倒し、乃ち殺さるを見る。其の隊將の張泓之、朱道欽、陳滿と天與は拒戰に同じく出で、並べて死す。世祖の即位せるに、車駕し臨みて哭す。泓之らには各おの郡守が贈られ、天與が家には長稟を給さる。
(宋書91-3_衰亡)
なんだこのひとかっけえ……というか親父殿のこの、徐赤特配下から組み込まれたとかいう来歴がめっちゃ渋くて好きです……。
ひとの子、宋の臣下として、普通はどうしても羅訓、徐罕みたいな振る舞いになっちゃうと思うんですよ。たとえ卜天與の行動のほうが正しいのであろうにせよ。このひとの中で皇帝に仕えるは第一義であり、それをまっすぐに貫いた。気持ちのいい筋の通り方した方だな、と思いました。
まぁ身近にいられたら息詰まりそうだけどな!
ところではじめオヤジ殿の名前卜名祖だと思ってたんですが、たぶん「父祖」だと読み手をパニクらセルから、みたいな配慮ですね。できるんだ沈約さん、こういう配慮……。
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