王智   沈黙は金    

王智おうち琅邪ろうや臨沂りんし県の人だ。

曽祖父は王導おうどう、祖父は王劭おうしょう、父は王穆おうぼく

ついでに言えば王謐おういつの兄の子ともなる。


若いころから飾らず、

しかし高貴な振る舞いであったため、

劉裕りゅうゆうもかれを非常に重んじていた。

こんなことも言っている。


「王智殿を見ていると、

 古の名士、王濛おうもうさまとは

 あのようなお方だったのではないか、

 と思われてならん」


劉裕が劉穆之りゅうぼくしとともに

劉毅りゅうきの討伐について討議していた時、

王智もその近くにいた。


別の日、劉穆之は劉裕に問う。


「劉毅の討伐は重大ごと。

 これを王智殿に

 どうお伝えしましょう?」


劉毅討伐は不意打ちである。

つまり、うかつに事が漏れてしまえば、

計画は瓦解する。


しかし、劉裕は言う。


「あのおひとは高簡な方。

 あの議論を聞いた、ということには

 なさらんだろうさ」


そのような形で

劉裕にも認識されていた。


劉裕が太尉となると相談役となり、

長安ちょうあん制圧の後には長安にとどまって

隆義真りゅうぎしんの副官、兼天水てんすい太守となった。


帰還すると宋國五兵尚書、晉陵しんりょう太守となり、

建陵けんりょう県五等子に爵封を受け、

死後には太常を追贈された。




王智,琅邪臨沂人也。曽祖導,祖劭,父穆。少簡貴,有高名,高祖甚重之,常云:「見王智,使人思仲祖。」與劉穆之謀討劉毅,而智在焉。它日,穆之白高祖曰:「伐國,重事也,公云何乃使王智知?」高祖笑曰:「此人高簡,豈聞此輩論議。」其見知如此。為太尉諮議參軍,從征長安,留為桂陽公義真安西將軍司馬、天水太守。還為宋國五兵尚書,晉陵太守,加秩中二千石,封建陵縣五等子,追贈太常。


王智、琅邪の臨沂の人なり。曽祖は導,祖は劭,父は穆。少きに簡貴にして高名有り、高祖は甚だ之を重んざば、常に云えらく:「王智に見ゆるに、人をして仲祖を思わしむ」と。劉穆之と劉毅を討たんと謀れるに、智も在りたる。它日、穆之は高祖に白して曰く:「伐國は重き事なれば、公は云何んぞ乃ち王智をして知らしめんか?」と。高祖は笑いて曰く:「此の人は高簡なれば、豈に此の輩の論議を聞かんか」と。其の知るを見らるは此の如し。太尉諮議參軍と為り、長安を征せるに從い、留まりて桂陽公の義真の安西將軍司馬、天水太守と為る。還じて宋國五兵尚書、晉陵太守加秩中二千石と為り、建陵縣五等子に封ぜられ、太常を追贈せらる。


(宋書85-1_為人)




王智さんはあれかな……叔父の王謐さんが劉裕に対しておびえていたのを側で見ていたりしたのかな……いや、クーデター前はさておきクーデター後、絶対王謐さん劉裕の影におびえたよね……王劭家が劉裕の恩情で残っていることは痛いほど身に染みていただろうから、下手に動こうとはしなかったようにも見える。


にしても長安の動乱でしれっと戻ってきてて笑う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る