巻78 劉裕の縁者の子

蕭思話1 南斉の系譜   

蕭思話しょうしわ南蘭陵みなみらんりょう人。

劉裕りゅうゆうの義母、蕭文寿しょうぶんじゅの甥だ。

父親は蕭源之しょうげんし、字は君流くんりゅう

中書黃門郎、じょえん二州刺史、

冠軍將軍、南琅邪みなみろうや太守を歴任している。

徐兗、つまり東晋とうしん北魏ほくぎとの

マージナルエリアである。

異常に重い任地を任されている割に

伝が薄いのは、

……まぁ、そういうことなんだろう。

420 年に死亡。前將軍を追贈された。


蕭思話は 10 歳を超えたころ、

一言で言えば、クソガキだった。

ロクに読書もできず、ばくち三昧、

人の家の屋根に上るわ、そこで細腰鼓、

抱えられるタイプのつつみを持って

打ち鳴らして騒ぎ立てるわで、

誰もがこのクソガキ、と思っていた。


が、それが突然変わる。


なにせ、404 年。蕭思話は 15 才、

そんな多感なお年頃であった時期に、

義理のいとこの劉裕どんが、

桓玄かんげんを討ち果たし、救国の英雄に。

こんなん感化されない方が

おかしいだろってもんである。


数年のうちには行状を改め、

史書を筆写し、音楽、騎射にも通じる。


そんな蕭思話を見、

劉裕も「こいつは使える」と、

これまでの行状を不問とした。


そして 18 歳の時には

司馬徳文しばとくぶんの仮幹部として取り立てられ、

さらに、劉裕が相国となるころには、

その幹部として取り立てられる。


劉裕が皇帝となった直後、父が死亡。

いったん職を辞したが、復職すると

羽林監となり、石頭城せきとうじょう守備を任され、

更に父の封陽ふうよう県侯位を継承。

宣威將軍、彭城ほうじょうはい二郡太守になった。


多くの書、伝承を集め、書く文字も一級品、

音楽、馬術も堪能。

完璧超人かのようである。


その声望から、謝晦しゃかい荊州けいしゅう刺史として

西に出向こうとしたとき、

その副官として招聘したがった。

拒絶したが。




蕭思話,南蘭陵人,孝懿皇后弟子也。父源之字君流,歷中書黃門郎,徐、兗二州刺史,冠軍將軍、南琅邪太守。永初元年卒,追贈前將軍。思話年十許歲,未知書,以博誕遊遨為事,好騎屋棟,打細腰鼓,侵暴隣曲,莫不患毒之。自此折節,數年中,遂有令譽。好書史,善彈琴,能騎射。高祖一見,便以國器許之。年十八,除琅邪王大司馬行參軍,轉相國參軍。父憂去職。服闋,拜羽林監,領石頭戍事,襲爵封陽縣侯,轉宣威將軍、彭城沛二郡太守。涉獵書傳,頗能隸書,解音律,便弓馬。元嘉元年,謝晦為荊州,欲請為司馬,思話拒之。


蕭思話、南蘭陵人、孝懿皇后が弟の子なり。父の源之、字は君流、中書黃門郎、徐・兗二州刺史、冠軍將軍、南琅邪太守を歷す。永初元年に卒す,前將軍を追贈さる。思話の年十許りなる歲、未だ書を知らず、博誕遊遨を以て事と為し、屋棟に騎せるを好み、細腰鼓を打ちて隣曲に侵暴せば、之を患毒とぜざる莫し。此より節を折り、數年中には遂に令譽を有す。史を書せるを好み、彈琴を善くし、騎射を能くす。高祖は一に見、便ち以て國器とし之を許す。年十八、琅邪王大司馬の行參軍に除せられ、相國參軍に轉ず。父の憂にて職を去る。服の闋ぜるに、羽林監を拜し、石頭戍事を領し、封陽縣侯を襲爵し、宣威將軍、彭城沛二郡太守に轉ず。書傳を涉獵し、頗る隸書を能くし、音律を解し、弓馬を便ず。元嘉元年、謝晦の荊州為るに、請うて司馬為らしめんと欲せど、思話は之を拒む。


(宋書78-1_自新)




蕭思話伝を一読後のぼくの感想:「うん、盛ってるねこれ☆」


いや、なんというかですね……ここに載ってる姓こそがすべてなんですわ。「蕭」。宋を受けたせいりょうの国姓と同じです。同じだけじゃなく、ガチで親族だからタチが悪い。つまり蕭道成しょうどうせいってぽっと出なんぞではなく、完全に劉裕クーデターによって立ち上がった「劉裕武閥」の系譜に組み込めちゃう存在なんですね。しかも姻戚。蕭源之の栄達についても趙倫之ちょうりんし劉道憐りゅうどうれん劉遵考りゅうじゅんこうみたいな見方をする必要はあると思ってます。


もうちょっと書くと、宋書が編まれたのは斉~梁の時期。つまり蕭氏の天下。そんな中、どれだけ蕭氏の宗族を「ありのまま」に書けたもんかって感じがあります。もちろん才覚はあったんでしょうけどね。その辺の印象が、次話で爆発するのです。


それにしても謝晦さんは荊州に出ようとするときに、劉裕系の人材を配下に加えて身の安全を図ろうとしていた感がありますね。

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