顔延之4 竹林七賢論   

426 年。徐羨之じょせんしらが殺されると、

中央に召喚を受け中書侍郎に。

今度は劉劭りゅうしょうの教育にも参与し、

更に合わせて步兵校尉も兼務。

その厚遇ぶりはすさまじいものだった。


とは言え、顔延之がんえんし

酒を愛し、なにものにも束縛されない。

当時の世の中の流れに

迎合などできたものではない。


特に、劉湛りゅうたん殷景仁いんけいじん。かれらが

政権の中心にいるのが我慢できない。


「天下のお務めとは、

 天下の誰しもが協力し合うべきだ。

 一人、二人の知恵なんぞで

 回ろうものかよ!」


常にそんなことを言っていたらしく、

しかもその言い回しは激烈。

ガンガン政府の要人を口撃しまくる。


特に、劉湛にはこんなことも。


「おれは高みにこそおらんが、

 その器は卓越したものだ。


 本来なら、おまえなぞおれの家の

 小間使いがせいぜいだろうにな!」


劉湛、怒る。そりゃそうだ。

なので劉義康りゅうぎこうにチクった。

ちいせぇ!


ともあれ顔延之、永嘉えいか郡に左遷。

これを顔延之は激烈に逆恨みし、

五君詠を著述、その中で

竹林七賢ちくりんしちけんについての言及をなす。


山濤さんとう王戎おうじゅう

あいつらは貴顕に行ったからクソ。


嵇康けいこう

大いなる神鳥の翼は遂には折れた。

しかし、もとより龍を

飼い慣らせる者なぞおらんのだ!


阮籍げんせき

親しき者、母の、友の死に遭っても、

かれは口を開かなかった。

絶望を、決して表にしなかったのだ!


阮咸げんかん

推挙を受けても、官途は断った。

そして外鎮への出向を命ぜられ、

静かに任地に向かい、そこで死んだ!


劉伶りゅうれい

その痛飲は、まさに韜晦である!

どうしてアル中でなどあるだろう!

しかしその想いを、

だれが知っていたことだろう!


要は自分のことを歌ったわけである。




元嘉三年,羨之等誅,徵為中書侍郎,尋轉太子中庶子,頃之,領步兵校尉,賞遇甚厚。延之好酒疎誕,不能斟酌當世,見劉湛、殷景仁專當要任,意有不平,常云:「天下之務,當與天下共之,豈一人之智所能獨了!」辭甚激揚,每犯權要。謂湛曰:「吾名器不升,當由作卿家吏。」湛深恨焉,言於彭城王義康,出為永嘉太守。延之甚怨憤,乃作五君詠以述竹林七賢,山濤、王戎以貴顯被黜,詠嵇康曰:「鸞翮有時鎩,龍性誰能馴。」詠阮籍曰:「物故可不論,塗窮能無慟。」詠阮咸曰:「屢薦不入官,一麾乃出守。」詠劉伶曰:「韜精日沉飲,誰知非荒宴。」此四句,蓋自序也。



元嘉三年、羨之らの誅さるに、徵ぜられ中書侍郎と為り、尋いで太子中庶子に轉じ、之の頃、步兵校尉を領し、賞遇は甚だ厚し。延之は酒を好み疎誕にして、當世に斟酌す能わず、劉湛、殷景仁の專ら要任に當りたるを見、意に平らかならざる有らば、常に云えらく:「天下の務め、當に與に天下が之を共とすべし。豈に一なる人の智にて能く獨了したる所ならんか!」と。辭は甚だ激揚にして、每に權要を犯す。湛に謂いて曰く:「吾れ升らざる名器、當に由にて卿を家吏と作さん」と。湛は深く恨みて、彭城王の義康に言い、出だし永嘉太守と為す。延之は甚だ怨み憤り、乃ち五君詠を作し以て竹林七賢を述し、山濤、王戎は貴顯なるを以て黜を被り、嵇康を詠いて曰く:「鸞翮に時鎩有り、龍が性を誰ぞ馴らす能わんか」と。阮籍を詠いて曰く:「物故は論ずべからず、窮に塗しても能く慟く無からず」と。阮咸を詠いて曰く:「屢しば薦められど官に入らず、一麾にして乃ち出守せん」と。劉伶を詠いて曰く:「韜ぜるに精日沉飲せど、誰ぞ荒宴に非ざるを知らんや」と。此の四句、蓋し自序なり。


(宋書72-4_文学)




向秀しょうしゅうさん……(´;ω;`)ウゥゥ


いや顔延之自身は書いてるんですよ? 沈約の野郎が省略しただけで。いやそこまで来たら全員分書いてやれや。ほんと沈約って自分の論旨に沿わない発言とか著述ガンガンカットしてくるよな……


向常侍

向秀甘淡薄 深心託豪素

探道好淵玄 觀書鄙章句

交呂既鴻軒 攀嵇亦鳳舉

流連河裏遊 惻愴山陽賦

かれははんなりとした人格の裏に強い心を持っていた。その思索の深さは慎み深く記された著述からもうかがえる。また呂安りょあんや嵇康と交流できていることからも、その強さはうかがい知れよう。官途にこそついたが、その悲壮なる思いは山陽賦からも推測しうるのだ。


ねー。「蓋し自序なり」から外れますもんねー。とは言えさぁ、なんつーかさぁ。


なおこのひとがなんか阮咸さんを美化してるので一応書いとくと、阮咸は山濤によって中央に推挙されてます。落選しましたけど。


落選しましたけど。

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