巻72 大文人 顔延之

顔延之1 劉穆之との知遇 

顏延之がんえんし、字は延年えんねn琅邪ろうや臨沂りんし県の人だ。

曽祖父は顔含がんがん、右光祿大夫。

祖父は顔約がんやく零陵れいりょう太守。

父は顔顯がんけん、護軍司馬。

どんどん位が下がっておる……。


顔延之は若いころに父を亡くし、

貧乏暮らしを強いられた。

城からは遠く離れた、

非常にせせこましい家に住んだ。


そのような中でも読書を好み、

目を通していない本などない、

という状態だった。


更にその文章は当時の諸家らに比べても

ずば抜けて優れた、美しいものであった。

阮籍げんせきかよって感じである。


ただその振る舞いも阮籍そのものだった。

かぱかぱ酒を飲み、

細かいルールなど知らんぷり。

三十才になってもいまだ結婚もしない。


その妹は劉憲之りゅうけんしに嫁ぐ。

かれの父は劉穆之りゅうぼくし

劉裕りゅうゆうさまの副官として名高い、あの。


縁談を通じて顔延之との縁ができた

劉穆之、義理の父としてかれと接したい、

なので一回会ってみたい、

そう考えて顔延之を自宅に招いたが、

顔延之、その誘いを突っぱねた。


それがどういう評価となったのかは謎。



のちには劉柳りゅうりゅうの仮幹部となり、

そこから事務官に転任、

更には劉義符りゅうぎふの仮幹部に移った。




顏延之字延年,琅邪臨沂人也。曾祖含,右光祿大夫。祖約,零陵太守。父顯,護軍司馬。延之少孤貧,居負郭,室巷甚陋。好讀書,無所不覽,文章之美,冠絕當時。飲酒不護細行,年三十,猶未婚。妹適東莞劉憲之,穆之子也。穆之既與延之通家,又聞其美,將仕之,先欲相見,延之不往也。後將軍、吳國內史劉柳以為行參軍,因轉主簿,豫章公世子中軍行參軍。


顏延之は字を延年、琅邪の臨沂の人なり。曾祖は含、右光祿大夫。祖は約、零陵太守。父は顯、護軍司馬。延之は少きに孤貧となり、負郭に居し、室巷は甚だ陋なり。讀書を好み、覽ぜざる所無く、文章の美は當時に冠絕す。飲酒し細行を護らず、年三十にして猶お未だ婚ぜず。妹は東莞の劉憲之(穆之が子なり)に適す。穆之は既に延之と家を通じ、又た其の美なるを聞き、將に之に仕えんとせるに、先に相見えんと欲せど、延之は往かざるなり。後將軍、吳國內史の劉柳は以て行參軍と為し、因りて主簿、豫章公世子中軍行參軍に轉ず。


(宋書72-1_任誕)




顔延之。陶淵明とうえんめいと仲が良かったという文人です。琅邪顔氏は世説新語の時代にすでに落ちぶれ始めた家門ではあったみたいです。まぁ顔延之の父親も、若くして死んだから官位が低くとどまったって感じなんでしょうね。そうするとやっぱり傅亮ふりょう徐羨之じょせんしあたりとおんなじクラスの家門って感じかな。


それにしてもまたこういうところに劉柳さんがぴょこっと名前出てくるんですよね……なんなのこの人。マジで謎の存在感。

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