范曄4  刑死      

范曄はんよう劉義隆りゅうぎりゅうの弟、劉義康りゅうぎこうを奉じ、

反乱を目論むようになる。

が、その企みはあえなく漏れ、

囚われてしまう。

445 年 11 月のことだ。


「范曄は節度なき振る舞いによって

 しばしばその評判を損ねてきた。

 ただ、その際立った文筆の才ゆえに

 昇進し、清顕の地位にまでたどり着いた。


 しかし、その飽くなき権勢欲が祟り、

 その昇進が朕よりの温情であったにも

 関わらず、恨みをいだくようになった。


 朕は温情を下すたび、少しでもそなたが

 悔い改めることを期待したのだが、

 結局は悪人どもと結託し、

 このような真似にまで出た。


 もはやこれ以上見過ごせはせぬ。

 収監の上、厳しき沙汰が下るものと思え」


こうして范曄と、

その息子の范藹はんあつ范遙はんよう、甥の范蔞はんるい

共謀者の孔熙先こうきせん、子の孔桂甫こうけいほ、孫の孔白民こうはくみん

弟の孔休先こうきゅうせん孔景先こうけいせん孔思先こうしせん

謝綜しゃそうとその弟の謝約しゃやく仲承祖ちゅうしょうそ許耀きょよう

以上の人物たちは処刑された。

范曄は、このとき 48 歳だった。


范曄の兄弟の息子らのうち、

すでに父親が死亡しているものについては

広州こうしゅうに追放された。

ここには謝綜の弟の謝緯しゃいも加えられていた。


范曄の子のうち范藹は

琅邪ろうや王氏の嫁をめとっていた。

彼女の母親は劉栄男りゅうえいだん劉裕りゅうゆうの次女。

つまり范曄の孫、范魯連はんろれん

劉裕のひ孫に当たる血筋である。

なので助命嘆願を受け、遠流で済んだ。

劉義隆亡きあと、劉駿りゅうしゅんの代にいたり、

帰還が許された。



范曄が若かりし頃、兄の范晏はんあん

常にこう言っていたという。


「こいつは利益を求めるあまり、

 ついには一門を破滅させるだろう」


その予見は的中したわけである。




二十二年十一月,詔曰:「曄素無行檢,少負瑕釁,但以才藝可施,故收其所長,頻加榮爵,遂參清顯。而險利之性,有過谿壑,不識恩遇,猶懷怨憤。每存容養,冀能悛革,不謂同惡相濟,狂悖至此。便可收掩,依法窮詰。」曄及子藹、遙、叔蔞、孔熙先及弟休先、景先、思先、熙先子桂甫、桂甫子白民、謝綜及弟約、仲承祖、許耀,諸所連及,並伏誅。曄時年四十八。曄兄弟子父已亡者及謝綜弟緯,徙廣州。藹子魯連,吳興昭公主外孫,請全生命,亦得遠徙,世祖即位得還。曄少時,兄晏常云:「此兒進利,終破門戶。」終如晏言。


二十二年十一月,詔に曰く:「曄は素より行檢無く、少しく瑕釁を負い、但だ才藝を以て施すべかるに、故より其の長ぜる所を收め、頻りに榮爵を加え、遂に清顯に參ず。而して險利の性に谿壑の過ぎたる有らば、恩遇を識らず、猶お怨憤を懷く。容養の存せる每、悛革の能うを冀えど、同惡の相濟せるを謂わず、狂悖せること此に至る。便ち收掩し、法に依りて窮詰すべし」と。曄、及び子の藹と遙、叔の蔞、孔熙先、及び弟の休先、景先、思先、熙先の子の桂甫、桂甫の子の白民、謝綜及び弟約、仲承祖、許耀、諸もろの連及せる所は並べて誅に伏さる。曄は時に年四十八。曄が兄弟子父の已に亡き者、及び謝綜の弟の緯は廣州に徙さる。藹の子の魯連は吳興昭公主が外孫なれば、請うて生命を全きとし、亦た遠徙を得、世祖の即位せるに還ぜるを得る。曄の少き時、兄の晏は常に云えらく:「此の兒は利を進め、終には門戶を破らん」と。終に晏が言が如し。


(宋書69-8_衰亡)




范曄が関わった乱には、どうも宋で主導権を握りきれなかった一門が逆転を狙った要素が強いっぽい。例えばここで共謀になってる孔熙先は魯国人。つまり孔子のお膝元出身である。実際のところ、彼の叔父が奉聖亭侯という「孔子直系のお墨付き」をもらっているそうだ(孔熙先のアレのせいで剥奪された)。ここで孔靖を始めとした会稽孔氏に「孔子の〇〇世の孫」って言葉がついてきたのを思うと、孔姓氏族のアレやコレを妄想せざるを得ない。また謝綜は謝裕の甥。やはり主流からはやや外れている。


ちなみに范晏はちらちらと重要な役割を負って出てきます。劉義真に対する諌め役、みたいな感じですね。かれとその兄、范暠はおそらくこのときには亡くなっていますね。なので本文中のような文章(曄兄弟子父已亡者……徙廣州)が載せられたのでしょう。生きていた弟の范広淵は連座で殺されたと范泰伝で書かれていますし。


しっかし反乱者の書いた史書が破棄されるどころか正史にまで据えられるなんて、どんだけ高かったんだよ後漢書の文学的価値……。

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