范曄3  琴を弾く    

范曄はんようの身長は165cmに届かず、

太って色黒、眉やもみあげは

ハゲ上がっていた。


ただ、その琵琶の腕前は一級品。

斬新な演奏を提示する。


劉義隆りゅうぎりゅう、その腕前を聞き及んでおり、

しばしば、それとなーく、遠回しに、

チラッ、チラッと聞いてみたいアピール。

っが、范曄は言う。


「わたくし、とんと琴の演奏に

 明るくございませんで……」


と、結局その要求には答えなかった。


むうう、ならば。

ある宴席にて、酒を飲み、

劉義隆は大いに盛り上がる。

そして言う。


「歌う! 范曄、弾け!」


うーんどストレート。


さしもの范曄、

この命令を蹴ることはなかった。

とは言え、劉義隆が歌い終われば、

自らも演奏を止める。


その腕前を必要以上に

アピーるすることはなかったのだ。




曄長不滿七尺,肥黑,禿眉鬚。善彈琵琶,能為新聲,上欲聞之,屢諷以微旨,曄偽若不曉,終不肯為上彈。上嘗宴飲歡適,謂曄曰:「我欲歌,卿可彈。」曄乃奉旨。上歌既畢,曄亦止弦。


曄が長は七尺に滿たず、肥え黑く、眉鬚は禿す。琵琶を彈ずるに善く、能く新聲を為さば、上は之を聞かんと欲し、屢しば微旨を以て諷ぜど、曄は偽りて曉るからざるが若くし、終に上が為に彈ぜるを肯んぜず。上は嘗て宴にて飲みて歡適し、曄に謂いて曰く:「我、歌わんと欲す。卿よ、彈ずべし」と。曄は乃ち旨を奉ず。上が歌の既に畢うるに、曄も亦た弦を止む。


(宋書69-7_寵礼)




この人の生きるモチベーションの源泉はどこにあったんでしょうね。あまりにも多方面に才能を持ち合わせすぎているというか。その上、あまりアピールしようともしていない。あるいは己の才能を高値で売る方策に長けていたのかな。


アディショナルタイムでの出来事ですが、その人となりを色濃く伺わせるお話なので、破滅を描く前に拾っておきました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る