巻71 劉劭に殺された劉義隆の側近

徐逵之  劉裕の長女の婿 

徐逵之じょきし東海とうかい郡のたん県の人だ。

徐羨之じょせんしの兄である徐欽之じょきんしの息子。

兄に吳郡ごぐん太守の徐佩之じょはいしがいる。


劉裕りゅうゆうの長女、劉興弟りゅうこうていを嫁に迎えた。

なお劉興弟は「劉裕の初めての子供」。

その存在感の重さは半端ではない。

徐羨之の活躍が、どれだけ劉裕にとり

重要なものであったかが伺われる。


徐逵之は振威將軍、彭城ほうじょうはい二郡太守に。

劉裕の子たちは長男の劉義符りゅうぎふですら

406 年生まれであり、

劉裕の国内統一事業の総仕上げである

415 年の司馬休之しばきゅうし討伐の際に、

いまだ 10 才でしかなかった。


そうすると、重要なのが姻戚である。

この戦いで徐逵之に大任を与えて

功績を挙げさせ、肩書をつける。

司馬休之を打ち払い、

のちの荊州けいしゅうに徐逵之を据えたい。

そういう心づもりでいた。


世の中は上手くいかないものである。


精兵に固められた、徐逵之の率いる前鋒軍。

襲い掛かるのは司馬休之の同盟者である

魯宗之ろそうしの息子、魯軌ろき


強烈な突破力で前方軍は貫かれ、

徐逵之は陣中にて魯軌に討たれた。


中書侍郎を追贈された。




徐逵之,東海郯人。司徒羨之兄子,吳郡太守佩之弟也。父欽之,祕書監。尚高祖長女會稽公主,為振威將軍、彭城沛二郡太守。高祖諸子並幼,以逵之姻戚,將大任之,欲先令立功。及討司馬休之,使統軍為前鋒,配以精兵利器,事剋,當即授荊州。休之遣魯宗之子軌擊破之,於陣見害。追贈中書侍郎。


徐逵之、東海の郯の人。司徒の羨之の兄が子にして、吳郡太守の佩之が弟なり。父は欽之、祕書監。高祖の長女の會稽公主を尚し、振威將軍、彭城沛二郡太守と為る。高祖が諸子は並べて幼く、逵之の姻戚なるを以て、將に大いに之に任ぜんとし、先んじて令し功を立たしめんと欲す。司馬休之を討ちたるに及び、軍を統べ前鋒為らしめ、配せるに精兵利器を以てし、事の剋せるに、當に即ち荊州を授けんとす。休之は魯宗之の子の軌を遣りて擊たしめ之を破り、陣にて害さるを見る。中書侍郎を追贈さる。


(宋書71-1_衰亡)




この辺りのいきさつが一番大きく扱われているのは、楽志にある「督護歌」の話でしょう。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888050025/episodes/1177354054889353016

また別口でがっつり語ってもいます。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881962323/episodes/1177354054884634709


これねー……状況を調べれば調べるほど、劉裕の舐めプ&耄碌の結果に過ぎない印象があるんですよ。まず、何をどう頑張ったところで司馬休之側に世論を逆転させられるだけの発言力はありません。いやあったのかもしれないですけど、それにしたって戦の申し子たる劉裕と戦うには、いくら魯宗之が対後秦の最前線を長らく張り続けた勇将だとはいえ、役者が違い過ぎる。きっちり勢力をそろえて、王者の戦いですりつぶせばよかったんです。


なのに、おそらく「徐逵之に功績を与えたい」一心で、徐逵之ひとりの軍を突出させちゃってる。そのため、おそらく当時の東晋軍の中でもトップクラスの突撃力を誇るであろう魯軌にあっさりぶち抜かれちゃってる。いや、徐逵之の軍才うんぬんについては語れる材料が少ないですけど、魯軌の軍才はやばいですよ、それこそ劉裕にまともに仕えてたら前鋒軍任せられるだけの実力はあったと思います。


徐逵之を討ち取られた劉裕が示す怒りぶりは、宋書に書かれている中で一番激しいです。あくまで物語でしか話できないですけど、この時の劉裕は、自分のうかつさに対して何より怒っていたんじゃないかなあ。確かに戦は時の運。けど、もうちょっとやりようあったんじゃないかしら。


まぁぶっちゃけ書けば書くほど司馬休之戦の情報が全く出揃ってない中でなに語ってみても意味ねーなって実感にしかなんないんですけど。正直「宋書が書き残したこと」からの推測しかできない時点で、何にも正しい判断なんざできやしない気がしてますし。言えるのは「司馬休之戦で劉裕は勝ったけど娘婿の徐逵之が死んだ」という事実のみ。


この事実についての何かを、息子の徐湛之じょたんし伝から覗くことはできるんでしょうかね。

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