謝霊運5  撰征賦1   

系烈山之洪緒 承火正之明光

立熙載於唐后 申讚事於周王

 晋帝の先祖は神農の事業を継ぎ、

 祝融の輝かしい光を受け継いだ。

 また堯の時代、周王の時代にも

 功績を挙げ、称えられた。


疇庸命而順位 錫寶珪以徹疆

歷尚代而平顯 降中葉以繁昌

業服道而德徽 風行世而化揚

 かくて代々主君に忠勤を尽くして

 高位に連なり、宝を賜り

 地方を治めてきた。

 更に長い年月の間広く敬われ、

 繁栄を続けた。

 その政治は道に則り徳は美しく、

 その徳望にて人々は教化された。


投前蹤以永冀 省輶質以遠傷

睽謀始于蓍蔡 違用舍於行藏

 翻るに私は先人の業績に従うことを

 長く願ってきたが、

 自分の軽薄な素質を省みては

 情けなく思っている。

 はかりごとを始めるに当たって

 占ってみたけれど、

 結局出来進退を見誤っている。


庇常善之罔棄 憑曲成之不遺

昭在幽而偕煦 賞彌久而愈私

 常に善なる我が君の

 尽きせぬ徳をたのみとし、

 すべてを見通される

 そのみ心にすがっている。

 うまくいかぬときも目をかけて下さり、

 無論称賛を受ければ

 ますます可愛がってくださった。


顧晚草之薄弱 仰青春之葳蕤

引蔓穎於松上 擢纖枝於蘭逵

 薄弱なる枯れ草のような

 我が身を省みながら、

 香いつまでも若々しき陛下を仰ぎ見、

 つたの先を松の上に引き、

 細い枝を蘭の花咲く道に

 伸ばしている。


施隆貸而有渥 報涓塵而無期

歡太階之休明 穆皇道之緝熙

 そのような私にみかどは

 無尽の恵みを施してくださる。

 恩義に報いたく思うのだが

 機会がない。

 ただ帝の徳を喜び、

 大いなる道の輝かしきを喜びとする。


惟王建國 辨方定隅

內外既正 華夷有殊

惟昔小雅 逮于班書

戎蠻孔熾 是殛是誅

 古の王が国を建て

 四方八方を治められると、

 国の内外は正され、

 中華と夷狄とは区別された。

 詩経小雅が編まれた昔から、

 班固が漢書を編んだ時にまで及び、

 蛮夷が勢いを増してくれば、

 王たちは必ずこれらを征伐した。


所以宣王用棘於獫狁

高帝方事於匈奴

 周の宣王が獫狁討伐に、

 漢の高帝が匈奴討伐に出られたのは、

 まさにそのためである。


然侵鎬至涇 自塞及平

闚郊伺鄙 圍郭攻城

 しかし今や蛮族は中原を席巻し、

 掠奪を恣とし、城郭を包囲している。


慕攜王之矯虔 階喪亂之未寧

竊強秦之三輔 陷隆周之兩京

雄崤澠以制險 據繞霤而作扃

 帝をさらい、奴隷扱いする、その驕慢。

 しかし争乱は未だ収まらず、

 秦以来の都であった関中の地を狙い、

 ついには長安、洛陽を共に陥落。

 周辺のエリアをも手中に収め、

 堅牢なる地に拠点を構え、

 我らの進出を妨げてきた。


家永懷於故壤 國願言於先塋

俟太平之曠期 屬應運之聖明

 中原より江南に逃れてきた者たちは

 先祖の住まう家を、眠る墓を思い、

 やがて訪れるであろう泰平の日を願い、

 天の導きによって覇者が現れる日を

 心待ちとしている。



系烈山之洪緒,承火正之明光。立熙載於唐后,申讚事於周王。疇庸命而順位,錫寶珪以徹疆。歷尚代而平顯,降中葉以繁昌。業服道而德徽,風行世而化揚。投前蹤以永冀,省輶質以遠傷。睽謀始于蓍蔡,違用舍於行藏。庇常善之罔棄,憑曲成之不遺。 昭在幽而偕煦,賞彌久而愈私。顧晚草之薄弱,仰青春之葳蕤。引蔓穎於松上,擢纖枝於蘭逵。施隆貸而有渥,報涓塵而無期。歡太階之休明,穆皇道之緝熙。惟王建國,辨方定隅,內外既正,華夷有殊。惟昔小雅,逮于班書,戎蠻孔熾,是殛是誅。所以宣王用棘於獫狁,高帝方事於匈奴。然侵鎬至涇,自塞及平。闚郊伺鄙,圍郭攻城。慕攜王之矯虔,階喪亂之未寧。竊強秦之三輔,陷隆周之兩京。雄崤澠以制險,據繞霤而作扃。家永懷於故壤,國願言於先塋。俟太平之曠期,屬應運之聖明。


(宋書67-5_文学)

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