何尚之  劉義真を諫めるも

何叔度かしゅくどの息子、何尚之かしょうし。字は彦德げんとく

かれは若い頃には実に軽薄、

摴蒲に熱を上げていた。

が、成長に従ってふるまいを見直し、

節操ある振る舞いで讃えられた。


みだりに人と交流をもとうともしない

かの謝混しゃこんとも知遇を得ており、

よくともに遊びに出かけていた。


父親は清廉の極みであったから、

家は貧乏であった。

はじめ臨津りんしん令に取り立てられた。


劉裕りゅうゆう司馬休之しばきゅうし討伐に出ると、

府主簿とされた。


後秦こうしん討伐にも従軍したが、

何かをやらかし解任され、

建康けんこうに戻ったそうである。


何尚之は元々病を得ており、

何年もその病状に苦しんでいた。

なので婦人の乳をいただき、

病を癒したそうである。

……う、うん?


北伐従事の労をねぎらい、

都郷侯に封爵された。


劉義符りゅうぎふが即位すると、

劉義真りゅうぎしんの相談役となった。

ところで劉義真と言えば

徐羨之じょせんし傅亮ふりょうらとの仲が最悪。

なのでちょくちょく何尚之に

彼らへの不平を漏らしていた。


何尚之としては、そこに危うさを

覚えていたようだ。

なので劉義真を諫めたのだが、

まるで聞く耳を持たれない。


最終的に劉義真が廃され、

殺されると、中書侍郎となった。


劉義隆りゅうぎりゅうが即位すると

いちど臨川りんせん內史に任じられたが、

再び宮廷入り。

間もなく父、何叔度の死に遭い、

服喪のため職を離れた。

喪が明けると劉劭りゅうしょうの世話役に。


何尚之は読書を好み、

またその鑑賞姿勢も

優れたものであったため

劉義隆よりも絶賛を受けていた。


死亡は 460 年、79歳だった。

司空、侍中、中書令を追贈された。

簡穆かんぼく公と諡された。




何尚之字彥德。尚之少時頗輕薄,好摴蒲,既長折節蹈道,以操立見稱。為陳郡謝混所知,與之遊處。家貧,起為臨津令。高祖領征西將軍,補府主簿。從征長安,以公事免,還都。因患勞疾積年,飲婦人乳,乃得差。以從征之勞,賜爵都鄉侯。少帝即位,為廬陵王義真車騎諮議參軍。義真與司徒徐羨之、尚書令傅亮等不協,每有不平之言,尚之諫戒,不納。義真被廢,入為中書侍郎。太祖即位,出為臨川內史,入為黃門侍郎,尚書吏部郎,左衛將軍,父憂去職。服闋,復為左衛,領太子中庶子。尚之雅好文義,從容賞會,甚為太祖所知。大明四年薨,時年七十九。追贈司空,侍中、中書令。諡曰簡穆公。


何尚之、字は彥德なり。尚之は少き時には頗る輕薄にして、摴蒲を好み、既に長ざば折節蹈道し、操を立つるを以て稱うるを見る。陳郡の謝混に知らる所と為り、之と與に遊處す。家は貧しく、起ちて臨津令為る。高祖の征西將軍を領せるに、府主簿を補せらる。長安を征せるに從い,公事を以て免ぜられ、都に還ず。勞疾を患うこと積年なるに因り、婦人が乳を飲み、乃ち差えたるを得る。從征の勞を以て都鄉侯を賜爵せらる。少帝の即位せるに、廬陵王の義真の車騎諮議參軍と為る。義真と司徒の徐羨之、尚書令の傅亮らは協ぜざらば、每に不平の言有り。尚之は諫戒せど、納めず。義真の廢さるを被るに、入りて中書侍郎と為る。太祖の即位せるに、出でて臨川內史と為り、入りて黃門侍郎、尚書吏部郎、左衛將軍と為り、父の憂にて職を去る。服の闋ぜるに、復た左衛と為り、太子中庶子を領す。尚之は雅より文義を好み、從容として賞會し、甚だ太祖に知らる所と為る。大明四年に薨ず,時に年七十九。司空、侍中、中書令を追贈せらる。諡して簡穆公と曰う。


(宋書66-8_政事)




謝混が交流を持ってる辺り、さすがの盧江ろこう何氏って感じですねー。しかし東海とうかい何氏と盧江何氏が程よくミックスされて訳わからん。ちょっと油断するとすぐ見失いそうです。


このひとは劉駿りゅうしゅんの治世に死んでいったのか。徐々に威光衰えていく劉義隆、そしてその死を、どのように見つめたんでしょうね。なかなかに文学的な存在感を持つお方だな、と思いました。


と言うわけで(強引なツナギ)、次回よりはいよいよこの時代を代表する文学人、謝霊運しゃれいうんであります! いやぁ、ここまでの伝の薄さが突然覆されるこの感じよ……w

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