裴松之5 三國志裴注   

裴松之はいしょうしはその後中書侍郎、

司州冀州の大中正となった。

……んん? どっちも領有してなくない?

僑州すらこのふたつについては

置かれてないはずだが……まあいっか。


劉義隆りゅうぎりゅう、裴松之に命じる。

三国志さんごくしの内容増やしなさいよ、と。

陳寿ちんじゅの撰じた三国志は、

疑わしきは載せず、と言うスタンス。

なのでスッキリとしたものであったが、

なにぶん、情報量が少ない。

なので補足を、裴松之に依頼したのだ。


こうして裴松之、自らが集められる限りの

伝記史料を収集、注として加える。

スタンスは「疑わしきものも載せる」。


陳寿の記録とバッティングしようが、

いかにも胡散臭い記録だろうが、

情報は情報であると盛り込んだのだ。


ただ、胡散臭すぎるものに対しては

「これ書いたやつバカじゃねーの?

 ありえねーよくたばれ!」

とかコメントしちゃってるけど☆


完成したものを読んだ劉義隆、大絶賛。

「この書の価値は朽ちるまい!」

と表明している。


事実、この三国志裴注は

 「世説新語せせつしんご劉孝標りゅうこうひょう

 「水経すいきょう酈道元らいどうげん

 「昭明文選しょうめいもんぜん李善りぜん

などと並び、注釈のスタンダードスタイル、

お手本としての価値を得ている。


そこから一度地方勤務。

永嘉えいか太守として精勤し、

官吏も、民も、裴松之を頼りとした。


そこから中央に復帰。

散騎常侍、二州大中正に。

……これは中原勢力からの

亡命人士を査定する、といった感じの

役職なんだろうか?


その後再び外に出て南琅邪みなみろうや太守に、

間もなく老齢を理由に前線から引退。

中散大夫、國子博士となった。

さらに、太中大夫に昇進。


この頃、何承天かしょうてん

宋の歴史の編纂を開始していた。

裴松之にもその原稿チェックの仕事が

回ってきたのだが、間もなく死亡。

451 年、80 歳だった。


その息子は、裴駰はいいん。南中郎參軍となる。


裴松之が著した論文や晋の歴史書、

裴駰が注を施した司馬遷しばせんの史記は、

どれも今なお読まれている。




轉中書侍郎、司冀二州大中正。上使注陳壽三國志,松之鳩集傳記,增廣異聞,既成奏上。上善之,曰:「此爲不朽矣!」出爲永嘉太守,勤恤百姓,吏民便之。入補通直爲常侍,復領二州大中正。尋出爲南琅邪太守。十四年致仕,拜中散大夫,尋領國子博士。進太中大夫,博士如故。續何承天國史,未及撰述,二十八年,卒,時年八十。子駰,南中郎參軍。松之所著文論及晉紀,駰注司馬遷史記,並行於世。


中書侍郎、司冀二州大中正に轉ず。上は陳壽が三國志を注せしめ、松之は傳記を鳩集し、異聞を增廣し、既に成らば奏上す。上は之を善しとして曰く:「此れ不朽爲らん!」と。出でて永嘉太守と爲り、百姓に勤恤せば、吏民は之を便りとす。入りて通直を補せられ常侍と爲り、復た二州大中正を領す。尋いで出でて南琅邪太守と爲る。十四年に致仕し、中散大夫を拜し、尋いで國子博士を領す。太中大夫に進み、博士なるは故の如し。何承天が國史を續めど、未だ撰述に及ばずにして、二十八年に卒す。時に年八十。子は駰、南中郎參軍。松之の著したる所の文論及び晉紀、駰の注したる司馬遷の史記は、並べて世に行ず。


(宋書64-15_文学)




「これ書いたやつバカじゃねーの?」


就令羽請殺超,超不應聞,但見二子立直,何由便知以呼字之故,雲幾為關、張所殺乎?言不經理,深可忿疾也。


上記は蜀志、馬超ばちょう伝のハイチュウにある、裴松之の感想コメント。馬超が劉備りゅうびのことを官位でなく字で呼ぶ(家臣が主君を呼ぶ、と考えれば、甚だしく馴れ馴れしい)のに切れた関羽かんう張飛ちょうひが、宴会の席でなぜか劉備の側で立ちはだかってるのを見て、「あっおれこれ以上玄徳げんとく殿を字呼びしてたら殺されるんじゃね?」と悟った、というシーンについてのもの。


ここで裴松之は「は!? いままでの展開のどこに、馬超が字呼びのせいで二人から殺意向けられてることに気づける伏線あったんだよ!? そんなの理不尽すぎじゃん、むかつきノンストップだわー!」と「本当に書いている」。正直申し上げまして、おとなげなくてかわゆい。


詳細はこちらをどうぞ。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054887991873/episodes/1177354054887992029

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