王華2  勧進帳     

王廞おうきんの乱が起こった時に王華おうかは 13 歳。

王廞の軍中にいたが、大敗により

父親の姿を見失ってしまう。


そこで釈曇永しゃくどんえいと言う僧侶に

付き従って逃亡した。


劉牢之りゅうろうし、王廞の首を

上げられなかったため、

せめて息子たちを、と考えたのだろう。

王泰おうたいだけでなく、王華も捕まえようと

捜索の手を伸ばしていた。


釈曇永は王華に

僧衣の裾が地面に引きずられないよう

掲げさせていた。

要は小間使いのふりをさせたのだ。


捜索隊がそれを見過ごすはずもない。

擬装も十分想定の範囲内だからだ。


釈曇永たちは、遂にある川の渡しで

尋問に引っかかってしまう。

すると釈曇永、王華の歩みの鈍さに対し、

怒鳴りつける。


「ええい、貴様がとろとろしておるから、

 わしまでこの川を

 渡れなくなってしまったではないか!」


そうして錫杖で王華を

数十回も打ち据える。


まさか貴公子にここまで

ひどい真似をする事もあるまい、

捜索隊は釈曇永と王華を開放した。


後に王廞の罪が大赦によって免除され、

への帰還を許される。


王華は呉に戻ってから志高くふるまい、

とは言え未だ父の生死が不明であるから

地味な服装、粗食でもって暮らす。

みだりに交友を重ねることもなかった。


そのような暮らしぶりが、十年余。

その振る舞いは、当時の人から

大いに讃えられたそうである。


そんな王華の評判を聞きつけた劉裕りゅうゆう

しかし今のままでは王華を

登用することができない。


そこで、王廞の死亡を敢えて表明。

王華を喪に服させた。




華時年十三,在軍中,與廞相失,隨沙門釋曇永逃竄。時牢之搜檢覔華甚急,曇永使華提衣幞隨後,津邏咸疑焉。華行遲,永呵罵云:「奴子怠懈,行不及我!」以杖捶華數十,眾乃不疑,由此得免。遇赦還吳。少有志行,以父存亡不測,布衣蔬食不交游,如此十餘年,為時人所稱美。高祖欲收其才用,乃發廞喪問,使華制服。


華は時に年十三、軍中に在り、廞と相い失し、沙門の釋曇永に隨い逃竄す。時に牢之は搜檢せど華を覔せば甚だ急にして、曇永は華をして衣幞を提げしめ後に隨わしめば、津が邏は咸な疑いたり。華の行の遲きに、永は呵罵して云えらく:「奴子の怠懈なるに、行は我に及ばじ!」と。杖を以て華を捶ちたること數十、眾は乃ち疑わず、此が由にて免ぜるを得る。赦に遇い吳に還ず。少きに志行有り、父の存亡の不測なるを以て、布衣蔬食にして交游せず、此くなるを十餘年如くせば、時の人に美なるを稱さる所と為る。高祖は其の才用を收めんと欲し、乃ち廞が喪問を發し、華をして服に制せしむ。


(宋書63-2_仮譎)




釈曇永、当然司馬穎しばえいの追手から逃れるときの元帝のエピソードは脳裏をかすめたでしょうね。「ワイも物語の世界の住人になるんやデ!」的なアレ味を感じる。しかし残念っ!


俺も初耳でした(まがお)。

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