ファンタジー要素の入った文芸作品、というのが第一印象です。
まず、各章に入ったところの導入で次第に明かされていく世界観によって、謎に包まれた主人公の騎士の背景が次第に明らかになっていくという構成がとにかく上手いです。
受動的に読むだけの楽しみがあるわけではなく、主人公の背景や感情を自分なりに推測を立てながら読み進められるのも、この物語が提供するおもしろさの1つだと思います。
また、各章がとても続きの気になる引きを持っています。
山奥の村の平穏な日々に包まれた亡国の騎士が、村の生活に順応していく様子は心温まるものなのですが、それとは対照的に重い現実として語られるプロローグや導入によって、いったい今後の物語がどう展開していくのかというドキドキ感が止まりませんでした。
情景描写や戦闘描写はとてもイメージの湧きやすいものでした。とくに戦闘シーンは息を飲んで一気に読み進められてしまいます。
読了後、「読んでよかった」と満足を覚える作品であること、請け合いです。