第一章 : 安穏という名の空疎
――導入
エドルン地方を併合し、中元の大国であるテニア王国をも吸収したレシド帝国はアジール暦1018年、ついに大陸統一の名を掲げリヒテ王国に攻め入る。リヒテ王国を落せば、それは事実上レシド帝国がアジール大陸西部全てを支配下に置くことを意味していた。
開戦当初、圧倒的に物量で勝るレシド帝国の一方的な勝利が予想されたが、戦渦は思わぬ方向へと展開していく。それが後に《十年戦争》と呼ばれる戦役の幕開けであった。
――レシスト共和国、グラナド市立歴史研究所の所長、リオレン=シモンの著書
『近代歴史概論』、「十年戦争編―序章」から抜粋――
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