第2話 『崩壊』(2)

 王都サリエン西地区――東地区での騒動に比べ、そこは場違いなほどの静寂に包まれていた。

 その異様な静かさの中に、肉と骨を噛み砕いて齧るような、嫌な音が時折聞こえてくる。

 そして市街地を闊歩するのは、人ではなく犬型の魔物の群れであった。


 普通の大型犬より一回り以上大きいそれらは、もはや成人の男と同じくらいの大きさを有していた。

 鋭い牙は口の外まで長く伸びていて、もしそれに噛み付かれたりしたら一瞬で骨と内臓が砕けるに違いなかった。


――グジュグジュジュルル…………。


 肉を丸呑みするような生々しい音と、それに混ざって硬い何かが砕ける音が至るところで聞こえてくる。

 そう、西地区に放たれたその魔犬の群れは狩をしていたのだ。そして今、その狩を終え獲物を捕食している……人間という名の獲物を。

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