【ギャグ】フクロウ、温泉、アコーディオンカーテン

 むかしむかし、あるところに、若い猟師がいました。

 ある特殊性癖をもっていたので、女性が寄り付かず、一人で暮らしていました。


 ある寒い日のこと。猟師は獲物が見つからず、小屋へと引き返していました。

 すると、大きな音が聞こえたので、行ってみると、罠にかかったフクロウがいました。


 今日はフクロウか……。

 猟師は笑みを浮かべると、いつも通りフクロウの罠をほどき、山へ返してやりました。


 小屋へもどった猟師は、一息ついていましたが、そろそろ頃合いかと、温泉へ向かいました。


 温泉は小屋から更に登ったところにあり、保温のためアコーディオンカーテンで覆われて快適ですが、道が険しく、立ち入る人はほとんどいませんでした。

 カーテンの中からうめき声が聞こえるという噂もありました。


 しかし、山に慣れている猟師は、ゆうゆうと温泉に辿り着きます。

 すると、アコーディオンカーテンの向こうから、若い女性のような声がしました。

 猟師はまず、声をかけました。


「お嬢さん、こんな山奥までひとりで大丈夫かい」


「ええ、ここにはよく来てますから」


 今度ははっきりとした声です。どうやら本当に女性が温泉に入っているみたいです。

 猟師が入ろうとしたところ、女性はさらに言いました。


「けっして、カーテンを開けて中を覗かないでいただきたいのです」


「なぜですか」


「どうしても、です」


 女性はきっぱりと言いました。


 けど、こう寒くては猟師も我慢できません。彼はアコーディオンカーテンをおそるおそる半分めくりました。

 するとそこには、女性ではなく、昼間助けたフクロウがいました。


 驚く猟師に対し、フクロウは目を伏せたまま彼に背を向けました。


「姿を見られたからには、もうここにいるわけにはゆきません」


 フクロウは飛び立とうとしたが、一向に飛べる気配がありません。

 なぜなら、フクロウの体は翼と耳以外、女性に戻っていたからです。


「ああ、なぜ。なぜ飛べないの」


 猟師はその姿を見てニヤリと笑いました。彼はこうなることを知っていました。彼は何度もこの姿になった動物を見てきたのです。

 このカーテンは鶴の恩返しの襖と同じで、全て開けた場合は完全に動物に戻ってしまいますが、カーテンを半分しか開けなかった場合、半分しか動物の姿になりません。


 しかも猟師は、どれくらい動物に戻るのが一番興奮するのか研究していました。

 その結果、半分より少し少なめに開けると、女性としての魅力を残しつつ、モフモフの毛皮と耳を残した完璧なフォルムになることがわかりました。

 目の前にいるフクロウは、正に彼の理想とする獣配分の女性でした。


 猟師は変身の終了を確認すると、さっそく温泉に入りました。

 女体化したフクロウとの甘く激しい時間を、たっぷり楽しみました。


 次の日。

 猟師は山に入ると、罠にハマった子熊を見つけました。

 猟師は笑みを浮かべると、すぐに子熊の罠を解いてあげました。


「子どももいいんだよなぁ」


 そう。子供の動物の場合、子供の女性へと変化するのです。

 猟師は幼児体型の獣も好みでした。


 こうして、彼の性癖はエンドレスで歪み続けていきました。人間との結婚はとうてい無理ですね。

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【短編集】文学少女シリーズの三題噺に挑戦 しき @shiki_968

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