第2話

 「なあ、舶人。おまえはどこからきたんだ? 昨日、船が来たのを見てさ!」


 夏目は興味津々な様子で聞いてきました。


 「東京から」


 「えー! 東京! あの大都会の」


 「うん」


 「いいなー。てか、なんでこの田舎島に?」


 夏目は、羨ましそうに聞きます。


 舶人は、わけを話そうとしました。

しかし、変な奴だと思われたくなかったので、おばさんたちから聞いたことをそのまま話すことにしました。


 「お母さんとお父さんが、親戚の家で新鮮な空気を吸って来いって」


 そんな話しをしながら、二人は坂道を登っていった。

すると荒れ果てた、空き地が見えてきました。

そこから数人の子供が手をふっています。


 「ここは、俺たちのたまり場なんだ」


 夏目はそう言って、空き地のほうへ走って向かいました。

舶人も夏目の後について行きました。

すると、三つ編みの子が舶人の方をみて、言いました。


 「ねえねえ、夏目。この子だあれー?」


 そして次々と、ほかの二人も聞いてきました。


 「ああ。みんな聞いてくれよ。こいつ舶人って言うんだけど、東京からきたんだ!」


 夏目から聞いて、三人は驚いた顔をしました。

そして、舶人に近づいてきました。


「これが、都会の子かー」


 と、背が大きい子が頷きながら、言いました。


 「なあ、都会ってどんな所なんだ?」


 その子の後ろから、背が小さい子も目を輝かして聞いてきます。


「舶人、この大きい奴と小さい奴は、大輝と智也。三つ編みの奴は一花。これからおまえも”いるか冒険隊”の仲間入りだ!」


 夏目が、土管の上に立って大声で言いました。


「いるか冒険隊、敬礼!」


 すると、三人が夏目に向かって礼をしました。

舶人も合わせて礼をします。


「これこれから、新しい仲間を紹介する。岡本舶人だ」


 夏目が舶人に”こっちにこい”と手で合図をします。

舶人は土管の上に乗りました。

そして、夏目に声を潜めて聞きました。


 「夏目君。僕が新しい冒険隊って、どういうこと?」


 「何言ってんだよ。さっき、冒険隊の仲間入りっていっただろ」


 夏目は答えます。


 「今日は、あの”お化け洞窟”へ行くぞー」


 夏目が目をキラキラさせて言いました。


 すると、他の三人は、顔をこわばせました。


 「あの、おばけがでるって噂の!」


 一花が今にも泣きそうな顔でいいました。

智也と大輝も同じ考えのようです。


 「そんなの嘘に決まってるよ。それより、あそこはお宝が眠ってるって駄菓子屋のじいさんがいってたんだよ」


 と、夏目が言うと智也がおずおずと反論しました。


 「あのじいさんがいったんだろ」


 夏目は頷きました。


 「でも、もしお化けが出たら?」


 不安を口にした一花の顔は真っ青です。


 「そんなの俺がやっつけてやる! じゃあ、みんな行く、でいいな」


 夏目が聞きました。

三人は、浮かない顔でうなずきました。

舶人もよくわからなかったが、うなずきました。


 「それじゃあ、いるか冒険隊出発!」


 夏目が元気良く号令をだしました。

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あの夏、僕は もちこ @haku37

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