第3話 暗闇の中で鬼ごっこ
夜風が冷たいおかげで鼻が痛い
鼻が痛いせいで匂いもよく分からない
「へ…くちっ…!」
…我ながら情けないくしゃみだ
「ん"っ……w」
「あ"ぁ?」
あ、誰か笑ったな?
今私のくしゃみを笑ったな???
早速そいつを虱潰しに探す
「お前今私のくしゃみ笑ったろ!!!」
「おわぁあっ!!?!」
ガサガサと木の葉の擦れる音を響かせながら毛むくじゃらの大きな人型の獣を見つける
鬼ごっこの始まりだ
「貴様!さっきの笑ったの取り消せ!!!」
「すまねーって!あんまりにも可愛い(笑)くしゃみだったから!!」
「あーぁ…またあの二人で追いかけっこしてるわね…」
「だねー…犬がじゃれてるみたい…」
「しっ!それ聞こえてたらタダじゃ済まな……」
聞こえたぞ?
かんっぜんに聞こえていたからな?
「貴様らもかぁあ!!!」
「「うわぁぁぁぁあっ!!!!??」」
夜の訓練場に悲鳴が響き渡る
もはや訓練なんでどうでもいい、小馬鹿にした事を撤回させてやる
刃物はダメだが別に素手なら良いのだ
うん、素手なら……………まぁ、素手なら良いのだうん
「犬って言うんじゃなぁぁい!!!」
「「うわぁぁあごめんなさぁぁぁぁいっ!!!」」
「ほらほら逃げろ逃げろー!!」
ギリギリと拳を握り締めながら徐々に距離を詰める
軍靴の底で地面を抉るほどダッシュする
まずはルカだ
「まずは貴様だぁぁあっ!!!!」
「ごめんなさいごめんなさいぃぃい!!」
パーンッ!と乾いた音が響く
別に殴ったとかそういう訳では無いが、目標の眉間に合わせて弾の入っていない訓練用の玩具の銃を撃った
「おっルカが1番最初に負けたな」
「そうねぇ…私達も早く逃げましょっ」
軍靴が地面を削るザクザクという音を響かせながら取り逃した二名が逃げる
「うえぇぇん…中将いつも怖いよぉ…」
「おま…私より歳上だろ!?29だよな!?」
ちょっとやり過ぎた気がする…
毎度のこと泣かせてしまう部下を少し慰める
なでなで…と
まるで小さな子供でも慰めているかのようだ
「ま、まぁ…後でなんかやるから今は立って先に戻れ」
「ズビッ…ぐすん…わかりましたぁ…」
とことこと子供のようにルカは逃げる前の場所へと歩いていった
「さすがにこんなに所にはこねーだろ…」
「というか何で私はあんたみたいな毛むくじゃら中将と逃げなきゃいけないのよ」
「あ、お前言ったな?後で覚えておけよ??」
「何よ、やってご覧なさい毛むくじゃら」
あーあ、丸聞こえだ本当に…
こんなに話し込んでこいつらは本当に生きていけるのだろうか
そもそも喧嘩…と言うよりじゃれ合いするくらいなら何故一緒の方向に逃げたのだこいつら
まぁいい、さっさとやるか
「もしここが敵地ならお前ら頭吹っ飛んでるぞ」
ガシッと二人の肩を掴む
「「げっ…やば…」」
「これじゃあ単なる鬼ごっこだろうがぁあ!!!!」
「「うわあああぁあっ!!!!」」
パーンッ!!とまた乾いた音が二発響いた
「あの二人やられちゃったねぇ…」
「そうだね…ま、僕は中将に見つからなかったけどね」
「だってシモンは始まった途端に皆とは逆方向に逃げちゃったんだもん」
「皆して同じ方向に行くのはダメだろ?同調圧力とやらに負けてしまう美しい僕で無いのさ」
「相変わらずナルシスト…君もそろそろいい歳行くじゃん…」
ふっ…と笑みを零し髪をかきあげるナルシスト
かっこいいとでも思っているのだろうか
ルカ自身も大人ではあるが少々…というか他人よりもかなりビビりだ
そこもあってすぐに捕まったのもあるだろう
「あんたのせいで見つかったのよ、この毛むくじゃら」
「は、俺のせい!?おめーも騒いだだろうがお色気魔人!」
「なんですって!!?」
「あー!そうやってじゃれ合いするから見つかるんだろうが!!お前ら今日の晩飯抜きな!!!」
「「えぇぇえっ!!そんなぁあっ!!!!」」
まぁ別に本当に抜きにする訳じゃ無いのだが…
それくらい言わないと聞かないだろう
私が指揮官ではないが…そこのお偉いガルム中将がちゃんとやってくれないおかげで毎日こうだ
……うん、まぁ楽しいからいいのだが
相変わらずピーチクパーチク騒いでいる毛むくじゃらとお色気魔人
それを座って長めていたルカとナルシストを立たせる
そうして訓練を終え四人で兵舎に歩いた
今日の晩飯は何だろうか、美味しいものが出るといいな
血に飢えた獣達の唄 BlackAbyss @BlackAbyss
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