第2話 誰が昼間しか訓練しないと言った?

…眠い、がもう日が暮れた

そろそろ私自身も訓練に参加しなければ


「どうしてもこれ汚いな…新しいの頼んでおくか」


自分の薄汚れ使い古した軍服を一瞥いちべつし、手早く着替える

腰の右に銃を、左に黒鉄刀くろがねとうを携え桜の帽章が付いた黒い軍帽を深く被る


「夜風はいつもは生温いが…今日は少し寒いな、まぁ動くからいいのだが」


軍靴の踵を響かせながら兵舎の外へ歩く


「ぜぇ……ぜぇ…おぇっぷ…僕死んじゃう…」

「し、死ぬ…走り込みやめて帰ろうよガルム中将…私死んじゃうわ…」

「げほげほっ…こ、これくらいこの俺に掛かれば何ともな…ゔぐ……」

「はいはい、指揮官に口出ししない。ちょっと疲れたけどもうそろあいつが……ほら来たぞ」

「あー…さすがに、やり過ぎな気がするぞガルム、私が来る前にここまでへばらせてどうするんだ…」


ガルム以外の部下たちは地面に横たわっていたりしゃがみこんだりして息を整えていた

…どれだけの時間走り込みをさせたのだろうこの脳筋は


「ちょっとだけ、休憩した方がいいんじゃないか?」

「「「そーだそーだ!!!!帰ってご飯食べたい!!」」」

「うっせー!!今日は1日中訓練する日だろうがアホー!!!」

「アホって何よこの毛むくじゃらーッ!!」

「あっ言ったなこのお色気魔人!!誰が毛むくじゃらだ!」

「誰がお色魔人ですって!!?」

「おい、ルカとシモン。あの二人の馬鹿ガルムとイリアーナ放っておいてちょっと休憩するか…?」

「い、いえ…僕はもっと強くならないといけないので…」

「ルカくん、そう言わずに俺達だけで休もうじゃないか。さすがに…あの時間走り込みは死ぬ」


気の毒だな

とは思うが、これからもっとしんどい事を課すなんて言えない


──────


あの馬鹿約2ガルムとイリアーナが言い合いを終えた後、数十分の間息を整え休んだ

そろそろ十分休まった頃だろう

「さて…アレをやるとするか」

「「「えっ???マジでやるんですか?」」」

「あっそれ俺も参加なのか??」

「当たり前だろう?指揮官のお前もやるんだよ」

「俺の方が立場上なのになー…」


しゅん…とガルムの獣耳が垂れている、余程面倒なんだな

そう思いながら4人にルールを説明…と言うより再確認に近い話をする


「私が闇に紛れお前たちを付け狙う、だから自分の身を守れ。ただし刃物等々による反撃は無しだ、私が吸血鬼だから死なないとか傷はすぐ治るとは言え痛いんだ」

「リセル中将…それ毎回なんの意味が…」

「そうだよ中将、私たちになんの意味も無いのではなくて…?」

「(あーあ…走り込みやらせすぎて不満たらったらじゃねーか……)」


ルカが口出しをする

イリアーナも口出しする

毛むくじゃらは…コホン…ガルムは何となく思ってる事がしっぽの動きで察せる


「なら、夜襲されても生き残る自信があると?」

「「ゔっ……それは………」」

「要は暗闇の中で鬼ごっこすりゃいいんだよ、ちょっと過激だけども」

「ほら、20数える前にさっさと隠れろ散った散った!!」


声を荒らげると共に同士たちは散り散りに隠れる

まぁ…夜目は効くし聴覚も嗅覚もフルに使えばすぐ見つかるだろう


「いーち、にーい、さーん……」


我ながら子供っぽい数え方だ…


「…じゅーきゅう、にーじゅう。さて行くか」


辺りは静寂に包まれていて獣達の寝息が聞こえそうなくらい静かだ

まぁいい、探しに行くとしよう…

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