第34話 まあ上手くいくはずもなく
人の本性を引き摺り出すのに手っ取り早い方法はなんでしょう?
煽る。
で、キレさせる。
これに尽きる。
疑問質問異論反論文句具申その他一切の口出しは認めない。フィーリングで生きてるオタクに戦略的な方法は取れないんだ、無い袖は振りたくても振れない。
さて、これは俺が立てた作戦の大まかなネタバレでもある。
これなら相手の都合ガン無視できるから手っ取り早い上に、ストレス発散にもなって、おまけに問題解決までついてくるほどだ。一石二鳥どころか三鳥。そのうち一匹は美味しいターキーときた。え? どれがターキーかって? もちろんスト……問題解決です。
具体的な作戦は同時進行で説明するとして、今は移動教室での授業を終え、昼休み。
俺の昼は基本、一人行動である。
ここでのいつも一人だろというありがたいご指摘は無視するので悪しからず。
この時間帯、生徒が集まる場所といえばクラスはもちろん、中庭に部室棟、特別教室に、マニアックな場所でいえば体育館裏とか。特にうちの高校は中庭が整備されていて、昼休みは人で溢れかえることが多い。その分、必然的にクラスに留まる人は少なくなる。
ちなみに高校入ったばかりの時は、アニメみたく屋上で青空見上げながら昼飯食べるんだ、とか思ってる中学生諸君、あれはフィクションだ。今のうちに諦めとけ。事故自殺防止云々で鍵しまってる上に、そこに至る階段でさえ入れなくなっている。
と、終盤になってまで学校紹介するのはさておき。
本来なら今頃、秘密のマイプレイスで優雅な昼時を送っていたわけだけど。
あいにく今日は休憩時間を取れそうにない。色々と準備があるし、なんなら朝、大荷物を抱えて登校して、既に瀕死状態なまである。
とはいえ、俺がやらかすのは休み時間終了間近。生徒が戻ってくる時間帯が狙い目だ。
大変になることを見越して昼は持ってこなかったのだけど、さすがに小腹が空いたので購買で買った菓子パン咥えつつ、今は駐輪場にいる。
まあ誰もいない。遠くからテニスボールがめっためたに叩き潰される音がするだけ。
そういえば、いつもは真っ先に教室を出て行くから気付かなかったけど、うちのクラスに残って昼飯食ってるのはほぼ久遠のグループだけと言っていいくらいだった。混み合う廊下が嫌で出るタイミングを窺ってたら、謎に発見した。
さて、ここに来たのは無論、準備の一環だ。あと時が来るまでの暇潰し。クラスに居場所がなかったから逃げてきたとかいうなよ?
頭上に昇った太陽がギリギリ作ってくれた安地、基、校舎の影で涼みながら、缶のイチゴミルクで口の中の水分を容赦なく持っていくメロンパンを流し込む。
「あっま……よくいつも飲んでられるなあいつ」
休憩時間はあっという間、ぼちぼちチャリに置いといた荷物持って戻るか。
ちなみにこの駐輪場、ちょうど教室の窓側から見下ろせる場所にある。
なんでこんな時に説明するかというと、
「……あ、彩也ー!」
ということだ。
首を曲げて見上げると、校舎から紫音が見下ろしてくる。
「なんだー? イチゴミルクならもうないぞー」
「ちゃんと自分で買ってるからご心配なくー」
さいで。
まあ、そりゃそんなことじゃないよな。
「というか彩也、スマホは? メッセージ送ったのに」
「あー……わり、教室置きっぱでカバンの中だわ。急用か?」
これから大事な用があるから、正直付き合いたくないんですけど。
すると紫音は、呆れともどかしさを同時に表現するとかいう器用なことを見せてくる。
そして、
「一組! なんか西園さん、面倒なことになってるよ!」
「は?」
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