第11話嫌な朝

 ジリリリリと金属がぶつかる不快な音とともに、私は目を覚ました。枕元に置かれている目覚まし時計を強めに叩いて音を止め、ゆっくりと瞼をこする。

 

「はぁぁぁ」


 一際大きなため息を吐いてしまう。ため息をすると幸せが逃げるというが、その迷信が本当だとしたら私の今日の運勢は最悪だ。多分クラスに入るなりクラスメイトからヒソヒソと昨日のことを話題にされるんだ。

 そして昨日の男子を擁護して、私の陰口を飽きるまで言い続けるに違いない。本当、わざわざ転校してきたのに意味がなくなる。何事もなく平穏に過ごしたいと思っていたのに、初日からこの有様だ。

 確かに言い過ぎたと思う。なんであんなに声を荒げてしまったのか、もう少し冷静でいられなかったのか。でも私は悪いとは思わない。全部あの男子が悪い。

 ……こんな考えだから、また似たような過ちを犯してしまったのか? でも根底を変えることはできない。でも上部うわべだけを取り繕うことは簡単だ。だから昨日、クラスメイトには愛想よく接した。これが私にできる、精一杯の努力だ。他にはどうしようもない。だからまた同じことが繰り返されたら、私は自分の運命を呪うしかない。

 きっと何をしてもうまくいかない星のもとで生まれてしまったのだと。ネガティブなことを考えながら、制服に着替える。白のシャツ、緑色のスカート、赤いリボン、こん色のブレザーの順番で着ていく。着替えを終わらせて、トントンとゆっくりと階段を降りて居間に向かう。居間に着くなり私はテーブルの上に置かれていた食パンを袋から取り出し、冷蔵庫に入っているジャムを取り出してそれをパンに塗って食べ始める。

 最近ママが朝ごはんを作ってくれない。別に朝は仕事があるからまだいい。夕食なども最近は作ってくれなくなった。パパがピアノの仕事で家に帰らないことが増えてから、ママは少し変わってしまった。前みたいな優しいママが見られる日は、もうこないかもしれない。でもパパが仕事から帰ってきてくれたら、きっとまた優しいママに戻ってくれるはず。だからその日を私は待ち続ける。また昔みたいに、仲のいい家族になれる日が来るのを。

 私は食パンを口いっぱいに詰め込むと、それを牛乳で流し込む。歯磨きと洗顔をすぐに終わらせて、玄関で革靴を履いて家を出る。高校までは歩いて行ける距離だ。昨日は十分前後でついた。でも今日は、その高校までに向かう足が、やけに重かった。






















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その思いを天秤に乗せて ラリックマ @nabemu

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