師曰く───ママが言うには

高柴沙紀

第1話

 ───ああ。

 愛しいレイア。こんなにも、あなたが衝撃を受けてくれるなんて。


 殴られたような、とはよく聞く比喩ではあるけれど、本当なのね。

 祭壇に横たわる私を見た瞬間、あなたの視界が本当にぐらりと揺れたのがわかったもの。それは、血が一気に引いて体を引き摺り倒そうとする、その感覚なのかしら。

 銀の髪に縁取られた、いつだって見惚れてしまっていた怜悧な美しい顔から血の気が引くのを、今の私が見ることは叶わないけれど、ええ、ちゃんと

 赤い瞳が、有り得ないほど大きく見開かれるのも。

 いつものあなたなら、絶対に他人に気取らせたりしない動揺を、今、無防備に周囲に晒さずにはいられないほどに───あなたを襲った衝撃が激しかったのだと。

 私を取り囲んでいた方達が、あなたの隠し切れない衝撃を感じ取って、咄嗟に礼儀正しくことさえ、気が付かないほどに。


 嬉しい。

 ごめんね、レイア。

 私、嬉しいの。


 あなたの気持ちを疑ったことなんてないけれど……疑いようもないけれど、それでも、こんなにもあなたに思われていたんだって実感出来て。

 とても、嬉しい。

 ええ、思い残すことなんてないわ。


 ただひとつ。

 あなたを残して逝く、あなたを傷つける残酷な運命わたしから、あなたを救い出してくれる優しい人が現れるその瞬間を、確かめることが出来ない。

 あなたが癒されて、幸せになっていく───本当はちょっぴり、そんな事、望んでいないって……そんな我儘を、言ってもいい? ───のを見られないことだけが、心残り。


 ねえ、レイア。


 私達自身が、どれだけそれを厭おうとも。

 生物として───ことわりの役割として、決して相手たいしょうを圧倒するようなものではない、安心して愛でるに足るの美しい容姿に生まれ落ちる私達。


 花が虫を呼び寄せるために美しく進化していったように。

 勇者にために、望むと望まざるとに関わらず、美しさを備えさせられた私達。


 でも、あなたの美しさはそんなに基づいたものなんかじゃなかったわ。

 勇者のための美しさ。そんなもの以上に、あなたの気高さがその怜悧な美貌を輝かせているのよ。

 何も知らないあなたの、あなた自身の美しさ。

 あなたという魂の美しさ。

 今、私を取り囲んでいる方達の中にいらっしゃるだろう聖女様───私がお会い出来る日なんて来ないと、最初から知っていたけれど───よりもきっと、あなたの方がずっとずっと美しいわ。

 ええ、絶対に。


 身も心も稀有な美しさを持つあなたに、どんなに私が惹かれ、密かに狂おしいほどに求めていたか、あなたは知らないでしょう?

 そんなあなたに真剣に求められて、どれだけ私が天にも昇る気持ちでいたのか。


 知らなかったでしょう?


 一度だけ。

 心だけでなく体の全て、余すところなく、あなたに明け渡した。

 あなたが、私の何もかもを欲しいと思ってくれたから。

 私が、あなたの全てを欲しいと思ったから。


 汗に塗れる温かな肌も、華奢で柔らかな肉も、潤んだ瞳も、掠れる声も、熱い胎内も、甘い吐息も、震える唇も、まさぐり合う細い指先も。

 熱い闇の中でふたり、互いの肉体を重ね、這いずり、くねらせ、歓びを貪り合って。

 何もかも溶け合いながら、ふたりで上り詰めて。


 あなたは私で、私はあなただった。

 

 たった一度だけの、交合。

 獣のように発情した肉体を、本能に突き動かされるままに奪い合った。


 ああ、レイア。

 あなたが咄嗟に、無表情の仮面を被ったのが。その下の抑えきれない動揺も。

 じわじわと湧き上がってくる怒りや、悲しみや、遣る瀬無さが。


 愛しいレイア。

 嬉しい。

 あなたはきっと、誰にも知られないところで泣いてくれるでしょう?

 ああ……! 

 ごめんなさい。でも嬉しいの。

 あなたを泣かせてしまう申し訳なさすら、今の私には嬉しいの。


 厳粛な儀式に臨む神官として、冷徹な表情かおを張り付けたあなたを、儀式に参加している方達が、痛ましげに見ているわ。

 今の私には、禁忌なんてない。

 つい一瞬前のあなたの動揺を、皆、共感してしまったんだもの。

 きっとあなたが、姉妹のように育った神官のひとりが生贄として捧げられることを聞かされていなかったんだろう、と思っているんでしょうね。

 私とあなたが恋人同士だなんて、誰も知らないんだもの。


 私が限り。

 あなたが限り。

 ───


 ああ。

 儀式が始まるわ。


 ねえ、レイア。

 我らが偉大なる神官長が、私のお婆様だってことは知っているでしょう?

 そして私達の師である神官長補佐が、神官長と先代の勇者との娘だってことも。


 ごめんね、レイア。

 本当は私、小さい頃から師に……母に聞かされてきたの。

 おそらく、次の勇者の召喚時には、勇者の血を引く……勇者との世界に縁を持つ私が、勇者を召喚する扉を開くための生贄になるだろうって。

 いつか、この日が来るって、知ってたの。


 でもね、もう悔いはないわ。

 身も心も、あなたと結ばれた。

 そして……あなたが勇者のものになるのを、見ずに済むんだもの。

 繰り返されるだろう因果を、見ずに済むんだもの。


 ふふっ。あなたもお婆様のように、最初は勇者を憎むのかしら。


 お母様に……師に聞いていたの。

 お婆様の秘密の恋人だった神官も、こうして生贄になったんだって。

 恋人を奪ったその力で召喚された勇者を、お婆様はとってもとっても憎んだそうよ。

 ───でも、やがて憎めなくなってしまったって。


 あんまりにも、


 ねえ。

 ここではない世界から召喚される勇者達は、どうして考えないのかしら。

 せいぜい二代、あるいは三代ぐらいという短い周期で、どうして魔王が復活するのか。

 魔王を倒す聖剣を、どうしてこの世界の人間に扱うことが出来ないのか。

 

 聖剣を携えることが出来る、魔王を倒す力を持つ特別の存在……勇者として、あなたは召喚されたのだ。

 どうか、この世界を救って欲しい。

 たったそれだけの説明ことばで、どうして全てを信じられるのかしら。


 ───彼らはそういう存在なのよ。


 師はそう仰ったわ。

 ご自身のお父様であるその人を、ね。


 ───可哀想な勇者達かれらを、愛さずになどいられないでしょう?


 でも……ああ。もういいわ。

 もうすぐ扉が開く。

 私の役割も終わる。


 レイア。愛しいレイア。

 私、幸せだったわ。


 ───永遠に、愛しているわ。




 祭壇に横たえられた黒い髪の美しい少女。私の年上の姪が消えていくのを、無表情に銀の髪の神官が見つめている。

 でも、彼女が本当に平静にそれを見つめているわけではないことは、その瞳を見ればわかったわ。赤い瞳の奥で、激情が炎のように燃え盛っていたから。


 祭壇を囲む人々の上座に、国王であるお義父様、王妃であるお義母様と並んで神殿に持ち込まれた椅子に座っていながら、私はその瞳から目を離せずにいる。

 だって……だって、今までに見たこともないほどに美しく輝くこころの姿が、そこにあったのだもの。


 彼女自身の美しい容姿さえ、その魂の前には全くの無価値だとしか思えないわ。

 表情もなく、すらりと立つその細い体の奥で荒れ狂う、透明な冷たい炎。輝く火の粉を散らし、自らさえをも傷つけかねない鋭い刃のような輝き。

 美しい炎を幻視させるほどに迸る純粋な怒りは、きっと混じり気のない、心の底からの思いが燃え上がったもの。

 ───消えていく黒髪の少女……私の姪に対するものだと、一瞬にして私の心を捕らえるのと同時に、思い知らされずにはいられなかったけれど。


 羨ましい。

 初めて私は、他人ひとを羨ましいと思ったわ。

 こんなにもあの人に思われた、彼女を。

 すでに失われていながら、なおも、あの人の眼差しを捕らえ続ける彼女を、妬ましいと思わずにはいられないほど。


 銀の髪の神官───あの人の瞳に心を奪われて、密かな懊悩に身を焦がしているのは、私だけだった。

 他の方達は礼儀正しく、

 そのことに、少しだけほっとしたのは、私の身勝手だとわかっているの。

 でも、あの人の美しさに、他の方達が気が付かなくてよかったと、その気持ちだけは私自身にも誤魔化しようがなかったのだけれど。


 あの人を、他の誰にも盗られたくなんてない。

 身勝手だと、我儘だと、わかっていても……!

 

 他の方達───祭壇の周囲を取り囲んでいる、様々な立場の、そして選りすぐられた見目麗しい女性達は、消えていく少女と入れ替わるように祭壇に浮かび上がってくる光の魔法陣───異世界への扉だという───を見つめている。

 もうすぐ現れるであろう救世主……魔王を倒し、この世界を救うことの出来る青年、恐らくは、自分達の運命を握るだろう勇者の出現を見据えている。


 銀の髪の怜悧な美貌の神官。

 清らかな慈愛に満ちた優美な聖女様。

 精悍な獣のような、野生的な美しさの女冒険者。

 艶やかな花のような華麗な女魔法使い。

 凛々しく毅然とした端正な女騎士。


 お父様の言うところの、勇者と共に戦う『パーティー』として選抜された女性達だと、私は知っている。その中のひとりとして、王女である私もここにいるのだから。


 私は、王女であったお母様と先代の勇者との間に生まれた。

 そしてこの日のために、昔からお母様に教えられてきたわ。───おそらく、身を捧げた彼女、黒髪の、私の姪も同じように彼女の祖母、あるいは母に教えられてきたはずよ。


 先代の『パーティー』の中で、ただひとり未だ幼かったお母様には、勇者の発情を促すための時間が必要だったから……私が生まれたのは、他の姉妹達に比べてずいぶんと遅くなってしまった。お父様にとっての孫と、同じ年頃だなんてね。


 もっとも、先代勇者───お父様ったら、幼いお母様に発情しなかったわけでもなかったらしいけれど。


 彼にとってのを守って、お母様に子供が出来ないように抑制はした、と弁明していらっしゃったけど。私達に、彼が何を考えていたかわからないと思っているところが、お父様の可愛らしくて可哀想なところでしょうね。


 召喚されて『パーティー』を紹介されたお父様ったら、『かよ!』と浮足立ったのが、当の『パーティー』の方々と、当時の国王夫妻に筒抜けだったなんて、思いもしなかったのだから。


 お母様は仰ったわ。


 信じられないけれど、異世界から召喚される勇者は、私達のように相手の心がこと、互いの感情に同調すること、共感することが出来ないの。

 ───実際、お父様の傍にいたら、それが事実だって嫌でもわかってしまうのだけれど。


 そのままでいたら互いに相手の心が聞こえてしまうから、私達は服を着るように、礼節を守って心を障壁ヴェールで覆うことを常識としている。そして、そっとヴェール越しに相手の心に寄り添うことで、不躾に深く踏み入ることはせず、互いの感情の動きだけを察し合う。


 ヴェールを取り去って、柔らかな裸の心を触れ合わせ溶け合うのは、愛する人にだけ。


 そうすることで、共感と協調をもって社会を作り出していくこの世界の人間からすれば、お父様……異世界から召喚される勇者達は、剥き出しの心を曝け出して闊歩する、恐るべき存在だわ。

 彼らは心を隠すことが出来ない。他人の心が聞こえる、という状態が理解出来ないから、それを隠す方法がわからない。


「俺にはどうしようもないんだから、お前達が勝手に読まないことを信じるさ」


 初めて召喚された勇者は、そう言い放ったと伝えられているらしいわ。

 豪胆というよりも……もしかしたら、それは諦めだったのかもしれないわね。

 召喚された勇者は、元の世界には戻れない。

 そして彼には心を隠すことが出来ないし、私達には、その心の声から常に耳を塞いでいられるほどのはない。


 互いにどうしようもないのだから。


 だからそれ以降、この世界の人間は、勇者に真実を決して伝えないのよ。

 あなたの心が聞こえているなんて、あなたが何を考えているか誰だって知っているなんて、絶対に言えはしないもの。

 互いにどうしようもないのだから。


 勇者は必要なのよ。


 魔王の発現を察知するなり聖剣が絶えず発する荒ぶるは、どんなにこの世界の人間の心を穿ち、たちまち粉々に壊してしまうほどに強力なものだから。だからこそ、魔王を滅ぼすことが出来るのだけれど。

 そんな物を、この世界の誰が扱えるというのでしょう。


 けれど、勇者にはその意志が届かない。

 すたんど・あろーん。

 最初の勇者が、自らを表した言葉。

 自分の心だけで完結している存在に、他者の意志が届くはずがない。


 だから、勇者だけが聖剣を携えることが出来るのだと……本人だけが永遠に知り得ない真実を、この世界の誰ひとり、彼に教えたりはしないのよ。


 その代わり、この世界のために無理矢理連れて来られてしまった彼らの望みは、出来得る限り叶えようって。

 せめて、それくらいの罪滅ぼしは必要だって、人々は考えたそうよ。


 考えずにはいられないでしょうね。

 心の中を余すところなく晒しているなんて知らずに、無邪気にこちらを信用している勇者を目の当たりにして、罪悪感を感じずにいられる人はいないもの。


 お父様がそうであるように……代々の勇者が、純朴で人の好い青年ばかりだったというから、余計に。


 自由。力。敬意。冒険。地位。資産。……美女。

 あちらの世界では、そうしたものが尊ばれるのかしらね?

 勇者達は、殆どがそうしたものを心の奥で望んでいたそうよ。


 だから、彼らと共に戦う『パーティー』には、能力と共に秀でた美貌を備えた女性が選ばれた。ええ、勇者にその身を捧げるために。

 それは義務……いいえ、自然の摂理というものよ。


 形のない魂と魂を重ね合い、彼我の別なく溶け合う私達。

 肉体と全く別の次元で融合する精神と、頑なに別個の存在であり続ける肉体。そのズレが、この世界の波長を常に狂わせるのだと、賢者は伝えているわ。

 その波長のズレが魔力を凝らせ、ズレを生じさせる存在を無にするために、魔王が生まれるのだと。


 この世界の人間が愛し合えば愛し合うほど、自らを滅ぼそうとする存在を産み出すのだ、と。


 愛し合うことが出来ないなんて、考えられないでしょう?

 あの素晴らしい境地を、肉体なんて重荷にしか思えない程の、めくるめく快楽を、熱く溶け合う恍惚の瞬間を、手放すなんて誰にも出来ないでしょう?


 私達の愛を守るためには、だから、勇者が必要なのよ。


 いいえ。もちろん『パーティー』の女達は、お父様を……勇者を愛していたわ。

 この世界を、私達を救ってくれる人。

 純朴で、一生懸命で……何も知らない、可愛いひと

 だから、愛していたわ。体を与えることも厭わない程にはね。


 そう、体ぐらいならね。


 お母様の微笑みは、優しいものだったわ。

 歴代の勇者が、『パーティー』の女性全てとの間に子を成しているのは、誰もが知っている。勇者おとうさまだけが後ろめたそうにしているけれど、それが自然の摂理だって知らないのは、当の本人だけでしょうね。


 勇者との血を……縁を継ぐ子供だけが、異世界への扉を開ける。その数は多い方が、もちろんいいに決まっているもの。

 摂理よ。

 勇者に発情衝動を起こさせて、その血を残す。それが、生き残るための、愛を守るための、本能なのだもの。


 可哀想な勇者。

 彼らにしてみれば、愛は体があってこそのもの。肉体の獲得こそが、愛そのものだと聞くわ。体の発情が、そのまま愛だと。


 お父様は、彼の『パーティー』の女性達全てと体を繋げた。

 彼女達は、確かに、お父様を愛していたから、何も問題はなかったの。お父様も自分が愛されていることを、確信していたでしょうしね。


 ただ。

 それが、世界を救うお父様に対する尊敬と信頼、友情、そして……幼な子に対するような慈愛であることを、お父様だけが知らなかった。


 それは、恋情から育つ愛なんかじゃない。

 発情する体を開くことが、我が子に乳を与えるにも等しい慈愛からだなんて、この世界の人間ではない勇者には、どうしたって理解出来るはずがない。


 可哀想な、幸せな勇者。

 誰も、本当のことなんて教えはしないわ。


 愛し合う人にだけ、心の障壁を取り払いその全てを曝け出して、互いに溶け合い一体となることが、私達の愛の交わし方。

 子を成すための体の発情と、愛情を交わす交歓は全く別のもの。もちろん、それが同じ相手であれば、至上の喜びとなるでしょうけれど。


 可哀想な、幸せな勇者。

 ───お父様に抱かれながら、同時にその瞬間、お母様と先代聖女様の心が愛し合い、歓びを奏で合っていたなんて、永遠にお父様が知ることはない。淫らに乱れる肉体の興奮が、抱いている自分との行為によるものではない、なんて知る術はない。


 本当は、自分が心の底から求められてなどいないと知らず。

 彼女達が自ら体を差し出すのは、恋愛感情からなのだと、己に『惚れている』からだと、無邪気に信じている可愛らしいひと

 己の体越しに幾つもの愛欲が交わされていたことを、全く知り得ない、可哀想なひと


 この世界に在りながら、本当にはその中に入ることが出来ない、幸せな、可哀想な勇者。


 お母様は仰ったわ。

 ───可哀想な、大切な勇者を、愛してあげなさい。



 光が迸る。

 勇者が召喚されようとする魔法陣に向けて、あの人は強い、強い眼差しを向けている。まるで憎い相手が現れる瞬間を、その目に焼き付けようとするかのよう。


 気が付いた時には、私はそっと、あの人の心に寄り添っていた。

 冷たい炎に焙られ、焦がされてもいい。

 その心に触れさせて欲しい、と思わず願っていたから。


 だから───その心に触れた。

 礼節を保ってヴェールに隠された心を無闇に暴くことは、当然のことながら、本能的な禁忌に他ならない。それでも、触れずにはいられなかったの。


 ぴくり、とあの人の背が跳ねた。

 そして、こちらへ向けられた赤い瞳を、私は精一杯の覚悟で受け止める。


 私は、ここにいるわ。

 あなたが許してくれるのなら……私の全てを捧げてみせる。

 だから。


 私が、無表情を装った赤い瞳が潤んでいく。

 形の良い唇が、もの言いたげに……熱を吐き出すように、薄く開かれる。


 光が強く、白く、全てを染めていく。


 さあ、いらして下さい。あの人を愛する私のために。

 あの人の心を、この心で包み込み、共に一体となって快楽を奏でるために、必要な人。

 私達が愛し合うために必要な、大切な人。


 可哀想な、幸せな勇者。

 ───ええ。あなたを、愛してあげますとも。


 

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