ありもしない終わり

玄関の鍵が開く音がした。

前触れなく起こるそれに、虫が背を這い回るような不快感を覚えた。

自室の電気を消して、息を潜める。

のそのそと廊下を歩く足音が過ぎ、リビングのテレビが点いた。

遠くで鳴る雑音に紛れて、息を吐く。膝を抱えて想像する。

この部屋で生きているか死んでいるかも分からずに呼吸している私を、連れ出してくれる存在を。朝が来たら、全部夢だったと言ってくれる温かい誰かを。

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