蕩かされて

「力、抜いて」


「抜いて、るっ」


「へたくそ」


「ぅる、っさい」


 二十年生きてきて私は、自分はタチだと信じて疑わなかったのだけど、この女と一緒にいるとそんな自分の中の自分像がどれだけ一面的なものだったかを日々思い知らされる。


 性技には多少自信があって、大抵の女なら溺れさせてやれると変な自負もあった。私にとってセックスは相手を乱れさせる行為で、自分が肉体的な快感を得ようと思ったことはない。

 欲しいと思わなかったし、自分より相手を感じさせることに充足を得るタイプなんだと普通に思ってた。それが。


「どう? 気持ちいい?」


「ほんっと、むか、つく!」


「それは気持ちいいってことね」


「黙っ、て」


「はいはい、いいわよ誰の代わりでも。私の指で沙弥華が感じてるのは、変わらないものね」


 ニヤニヤと笑う一夏が憎たらしい。けれどその言葉は真実で、私の身体は彼女に限界まで煽られて、その指がどこに触れてもその刺激を快感に変換してしまう。


 早い話、この女はやたらとセックスが上手かった。タチ一筋だった私を、簡単に蕩かしてしまう程度には。

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