なんでこんなやつ

 そんな出会いをした変な女は、いま私の隣で学食のカレーを嬉しそうに口に運んでいる。スパイシーなスープカレーは学食のメニューでは珍しいらしいが、あいにく他の大学の学食事情を知らないのでその希少性を実感することはない。毎日のようにコイツが隣で食べるものだから、なおさらだ。


「さーや、そろそろ彼女できたの?」


「あんたはいい加減彼氏できたの?」


「ぐへぇ」


 私の返事に舌を出して苦り顔をしてみせる鮎奈。舌先がほんのりオレンジがかっているのはカレーのせいだろう。あー、その舌しゃぶりてぇ。


 鮎奈に見られたあの時の彼女とはとっくの昔に別れていて、正直今では顔もハッキリ思い出せない。会えばわかるだろうけど、別段会いたいとも思い出したいとも思わない。……まぁ、つまりはそういうことで。


「彼氏欲しいって言う割に、ゆなって本当にその気があるか疑わしい」


「ほしいけどさぁ。でも、自分がどーとかってより、尊い女の子たちを眺める方に忙しくてさぁ」


「それ、ホントに男に興味あんの」


「あーるぅーよぉー」


 わざわざ立ち上がって私の背中でぐねんぐねんと悶えるようにうねるたびに、大きくもない胸がぐりぐりと押し付けられて、振り返ってわし掴んでやったらどんな顔をするかと想像する。……多分、きょとんとされて「やーえっちー」とかなんとかほざいて終わりだろう。ムカつく。


 なんで私は、こんなノンケのバカ女が好きなんだろうなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る