第4話

愛花は大人になっていた。

「カケル、私死んじゃったんだ…カケルと少し喧嘩した時に家から出てムシャクシャになって走っていたら、おじいちゃんが運転してた車に轢かれちゃって…あーあ、せっかくの私の顔がぐっちゃぐちゃになっちゃったんだよ?ねえひどくない?!」と愛花が言った。

相変わらずだな…死んだことを受け入れてるのにもこんなにテンションが変わらないとはな…。

「あれ?カケルなんで泣いてるの?」

「え?」

愛花に言われて気づいた。翔は涙を流していた。どうしてだろう…ここは夢の中だ。でもなんで、現実で起きるはずもないのに…と思っていると

「あ、そういえば高校の時カケル愛花が死んだ夢を見たって時があったな、そんときは笑ってなにそれーっ!てリアクションしてたな…あ、それから……」

翔は突如目が覚めてしまった。時間はまだ午前3時。まだ月が見えている。そのとき

「カケル!聞こえる?さっきの夢の中の話し続けて話すよ!」

窓越しで声が聞こえた。夢の中で話した愛花の声だ。

「まさかね、カケルが言ってたことがホントになるなんてなあ〜。ちょっと後悔しちゃった。」

翔は少しずつ信じていった。そして愛花はこう続けた。

「ねえ、カケルにお願いがあるの。」

「なに?」

「実はさ、死んだ今思うことがあって、それをお願いごととして聞いてもらってもいい?」

愛花はそういった。翔はなんだろうと思い聞くことにした。

「なんだい?」

「今、私に少し冷たく接してるでしょ。」

「そうなのか?おれはそう接してるつもりは無いけど。」

「そうかもしれないけど、当時の私はそう思ったの!だからお願い、もっと私のことを大事にして過ごして。」

「あぁ、わかったよ。」

少しめんどくさいと思ってた時だったけどもやっぱり死んでしまうのはすごく嫌だ。翔は未来の愛花にそういった。

「私がこれから喋れるのはこの深夜帯だけなの、月が出ていると話せる。だからそしたら窓越しにいて。またいろいろ話せるから。」

そういうともう愛花の声が聞こえなくなった。翔はとても不思議な体験だと思うと共にこれから本当に愛花が死んでしまうのかもしれない。そう思ってしまうと何としてでもあいつを守るという責任感が生じてきた。

もう朝だ、あいつにやれることはやろうと翔は決意した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひとつの夢 @yuha14

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ