第15話ヨルムガルド (2)
火へと一直線に突っ走る
そんな直弥をヨルムガルドが見逃すはずもなく壇上から飛び上がると直弥目掛けて右手に持っていたごつごつした鉄球のような物を投げ飛ばしてきた。
それはストレートに自分に向かい飛んできたが俺に避けるという選択肢は見出せなかった。なぜならナイトがいたからだ。
「させません。」
飛んできた鉄球はナイトの二倍以上の大きさをしていたがそのようなことを気にする素振りすら見せず自分の真横で盾を構えて鉄球のスピードを殺し、軽く受け止めて見せた。
ナイトが盾になってくれたおかげで難なく火元までたどり着くことができた。
俺はそれに何の躊躇いもなく左腕を突っ込む、燃えるように熱い、わけではない。熱さは一切感じないし近づいた際に服に火が燃え移ることもない。
やはり偽物の火だった。
俺はそのまま火の中に突き進む。そこにあった死体の山すら偽物だったようだ。
なぜ偽物だとわかったのか、それはヨルムガルドのゲーム内設定のためだ。
ヨルムガルドは殺した死体を山のように積み上げる習性を持っている。その死体の数がヨルムガルドの強さを意味するのだが殺した数の少ないヨルムガルド、今回で言えばこの世界に来て?なのかはわからないがもしそこからのカウントなら殺した数もせいぜい百から二百、ゲーム内でのヨルムガルドが殺した数がこの数なら平均レベルは五十がせいぜい。そういった低レベルのヨルムガルドにみられるのが幻術で死体の山を築くことである。
幻術で死体を作ることで仮初ではあるがその分力を増す、ただその死体はヨルムガルドの力の欠片で作られているためそれを破壊できれば大きく弱体化できる。
余談だがこの能力はヨルムガルドが強すぎたため運営による下方修正の影響で使われるようになった能力だ。弱点らしい弱点が無かったがためこのような諸刃の剣なスキルが加わったのだ。
ではなぜその死体の幻影に火が付いたのか、それはデラクの固有能力真実看破の影響だ。デラクが近づくだけで偽物はすべて本来の形へと戻ってしまう。その本来の形に戻るエフェクトが炎だったというだけだ。
「あった!!」
見つけた結晶をつかみ取る。手に掴んだのは六角形の真っ赤なクリスタル、掴んだ瞬間死体と炎が消滅し視界が開ける。
反対側にあった死体の山も消滅している。俺は問答無用でその反対側の死体のあった場所目掛けてクリスタルを投げ飛ばす。
すると空中で空間が揺らぎクリスタルが砕け散り消し飛んだ。
「ガアアアアァァァァァッ―――――――!!!???」
力の片割れであったヨルムガルドのクリスタルを同時に二つ割れたことによりヨルムガルドが苦しみ悶えだす。
そんな好機を逃すはずもなく二人に指示を飛ばす。
「畳みかけるぞ、お前たち!!」
アナザー・リアル・ワールド 鐘上菊 @mira_gugu
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