第5話 約束 メイ編&過去編

「買い物に行来ましょう!」

この一言は私の中でデートに誘ってるつもりだった。デートにいきましょう!と、たった3文字違うだけなのにデートという単語は私にはハードルが高くかんじられる。

「買い物?なら、いいよ?」

その一言を聞いた瞬間、私は本当に、本当に嬉しかったのに……

私は、すぐに分かった。表情に恥ずかしがっている様子はないし、慌ててる様子もない。これは、勘違いしてるんじゃないの?と。

多分、シュウジ様は私の事は女として見てる!ただ、致命的なほどまでに鈍感なだけ、絶対そうに違いない!

そんな感じで、いろいろ考えていたらシュウジ様はいつのまにかカレーを食べてしまっていて、2階へ戻ってしまった。

「少しくらい、勘付いてくれてもいいのに」

そんな泣き言を言いながら、私は皿を洗い片付ける。

「あっ、舐めておけばよかった…」

そして、時刻は10時過ぎになり全ての家事が終わるとお風呂を借りて、一人台所でボーッとしていた。

まだ、明日の宿題ができていないのにどうしてもやる気がでない。

「はぁ、疲れた…でも、楽しかった」

夜の静けさは、少し寂しさを感じ、こんな日には最近の出来事を思い出す。




ここに働きに来るまで私は、一人で暮らしていた。

話す相手も居なかったし、一緒に食べる相手も居なかった。日が照りつける朝でさへ、寂しさはなくならなかった。さびしい、さびしい、さびしい…

そんな時、お母さんの知り合い"だった"という男の人が家にやってきた。

男の人が私に話した内容はこうだ。

「もし良かったら、バイトをしてみないかい?僕はもう少ししたら、海外に出張に行かなければならないんだ。出張は、1週間や2週間じゃ終わらなくてね。2ヶ月、いや1年になるかもしれないんだ。その間、息子がちゃんと生きていけるか心配でねぇ。」

「は、はぁ…」

突然やって来て、自語りをし始める男性に少し不信感を覚える。

「そこでだ、息子の面倒を見てやって欲しいんだ。給料だって払うし、もし気に入ってくれたならそこで住んでくれても構わない。」

「でも、私。その息子さんについて何も知らないし…」

正直、怪しさ全開だった男性の話に私は戸惑った。

男性は、私の気持ちを察したのだろう。諦めた様子でいた。

そして、男性はポケットから一切れの紙と写真を取り出して私に言った。

「これ、うちの住所と息子の個人情報と顔写真。気が変わったりしたら、いつでも連絡頂戴ね」

そう言い、家の前に止めた車で去って行った。

「怪しい。」

息子の情報を簡単に提供する親がいるのかと、少し呆れる気持ちはもちろんだが、そんな家族に私は少し興味を惹かれた。

「今度の休み、見に行ってみようかな」

これが、事の全ての始まりだった。

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