小さなリンゴ
瑠璃・深月
出会い
小さなリンゴ
小学校三年生の上田実花(うえだ みか)の住んでいる場所は、山がとてもきれいに見える場所でした。水も空気もきれいで、実花は、自分の住んでいるこの場所が大好きでした。
実花は、リンゴを育てている農家の一人娘でした。お父さんの作るリンゴはとても甘くて、宝石のようにきれいでした。実花はお父さんの作るりんごが大好きでした。
実花は、生まれたときからリンゴの気持ちを感じることができました。お父さんもお母さんも、そのことを少しも不思議に思わなかったし、実花も当たり前に思っていました。でも、それは、学校ではふしぎなことだったのです。
実花は、時々、給食でリンゴを残す人を見て、泣いたり怒ったりすることがあります。それを見ていた友達が、実花をからかってくるのです。実花はそれがとても嫌で、悲しくなりました。
そんなある日、教室のすみで、一人で泣いていた実花の前に、一人の女の子があらわれました。その女の子は、実花をからかっていた男の子たちをけちらして、実花の手を取りました。その女の子のおかげで立ち上がることができた実花は、その女の子といっしょにそこから逃げました。学校の外にある庭まで逃げて、ふたりはそこで落ちつきました。
実花は、名前も知らないその女の子にお礼を言いました。
「助けてくれてありがとう」
すると、女の子は実花のほうに手を伸ばしてきました。あくしゅをしようというのです。実花は、喜んであくしゅをしました。
そして、女の子は笑って、実花に自己紹介をしました。
「私は、宮田)葵(みやた あおい)っていうの。あなたを見ているとほうっておけなかったから、助けてみたんだ。どう? 私たち、いいお友達になれると思うんだけど」
それを聞いて、実花はうれしくなりました。でも、実花は、すぐにはいいとは言えませんでした。
「葵さんとはいいお友達になれるかもしれない。でも、私はまだ、ほかの人が信じられないの。心が少し弱くなっちゃっているのかも。だから、少しだけ待ってほしいの」
葵は、実花の気持ちがよくわかったので、そこですぐに友達になろうとは、もう言いませんでした。今日のところは、ふたりはこれで別れました。
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