Ally-28:軽快なる★ARAI(あるいは、勝手に!/しゃがれドバっとメン)
何と言うか、かつてないヤバみを全・シナプスで感じている……
仕事机から振り返りながら立ち上がった、ジョリーヌと自称した御方は、その骨ばった手脚をぎしりと軋ませながら、僕ら五人の前に腕組みをしつつ対峙してきたのであるけれど。
それにしても背がうすら高いな!! この地下フロアの天井もまあまあ高いと思われるのだけれど、パースが狂うほどの
その見下ろしてくるギラついた目は、ハエトリグサのようなつけまつげによってさらに魔性感を指数関数的に上げて来ているけど、その値踏みするかのような視線は、他の大人たちがよくしてくる蔑み混じりのそれじゃあ無く、純粋に「僕」という人間、いや生物、いや肉の塊をグラムいくらかまで精密に試算してこようという負のベクトルに振り切れた気概を有しているわけで。
ぼ、ぼくちょっとおなかが……と本能の命に従い、その瘴気が渦巻いてきている場から緊急脱出を試みようとする僕だったけれど、既に御大の命がそれよりも速く回ってきていたのか、両脇から猿人と髪人がしっかりと僕の両腕の付け根あたりを掴んでいて、軽く極まっているらしく前後左右どこへも体が動かせない。ここにきて「A★M★N★C」が僕を絡め取りにくるとは……ッ!! というかこの護身術同士がかち合うと数の暴力に押し切られるんだね……無念……ッ!! と、
「じょ、ジョリーヌ殿とやらッ!!
安定のしゃがれ声が、安定の
「えっと……ですね、僕らこの秋の文化祭の出し物で『1985年』にまつわるものを展示しようと計画してまして……そのひとつにブラウン管の、テレビを、という事でして……」
と、めちゃくちゃ鼻息荒くふんふんと聞いてくれる人がいたからか、割としっかり丁寧に切り出すことが出来た。そしてそのままつられるようにしてファミコンのこととか万博のことまでもするすると喋ってしまう。ま、まあ動機はともあれ、相対してちゃんと聞いてくれる相手がいるっていいよね……
とか、引き込まれている場合じゃない。というか引き込まれたらはっきり危険だ。と、
ふぅん、ブラウン管のなら、ほらそこにあるけどねぇん、と縦にふたつに割れた立派な青々とした顎をしゃくられたのでその方を見やると、大小さまざまな家電とか、基板剥き出しの装置じみたものやらに囲まれて、結構大きめの、目指すその物体が鎮座していたわけで。
おお、との声が思わず出てしまったけど、他のみんなも口々に驚きと歓喜の声をハモらせてくる。確かに、画像で見たことある奥行ハンパない箱のような形のテレビがそこにはあった。でも結構な大きさだ。猿人氏がやっと抱えられるくらいの胴幅はありそう……昔のってこんなだったんだ……しかし、
「もちろん動作は確認済よぉん……でも中古とは言え、結構お値段張るけどねぇん……28型のそれは12万」
その後に続けられたジョリーヌさんの言葉にええ、となってしまう。流石に高すぎる……念のため猿人・髪人両氏に目線を飛ばすものの、無理無理無理とのアイコンタクトを双方から同時に返された。だよねー六桁は無理あるよねー。
「そ、その……ええと当日だけお借りすることとかは、出来ませんか……?」
空気中の瘴気濃度が高まってきたかのようなこの場に、清浄な鈴の音のような声が響き渡る……三ツ輪さん。さっきはすげなくされたけれど、面と向かえばこの特殊なる人物にもその天上の
が、
んぬわぁにかわいこぶりってんのよぉぉんこの××××(聞き取れず)わぁぁぁあんッ!? とのド迫力な人外の
ど、どうせら売れんばじょにっき、
どぅあから売れるっつってんだろこのご時世ッ!! との急にドスの入った感じでおっさん
どうしよう……あれ、皆の期待の視線が僕に集まってきているのを感じる……しかし迂闊なことを申し出たら、僕の純潔がヤバそう……とか逡巡していたら。
「……ま、でも面白いコト考えついちゃったわぁん。『勝負』。アタイとの勝負にアンタらが勝ったのなら、そこのテレビは格安の一万で譲ってあげなくもないわよぉん……」
その巨顔自体が、むほりと音を立てたかのように感じた。破格の条件。しかして、ただならない嫌な予感が僕の坐骨神経から脳下垂体まで一直線に貫いたかのように感じられたのは何なんだろう……
「……アタイが勝ったらジロちゃんの身柄を一昼夜拘束するけど」
あかぁぁぁん……ッ!! 今日いちのあかん波濤が、僕の心の許容水域を軽々とざぶりこんと乗り越えてくるよヤバいよ……
「お、面白そうだげに。なかなか話の分かる御仁ばにてぃ、じゃご『勝負』とば何するもんちょ?」
いやいやいや、団長はもう受ける前提で話を進めとるけ↑ど→!! 親友の菊門の
「……その名も『
何故か自信たっぷりのいい声で告げてくるジョリーヌさん。その言葉の七厘も理解は及ばなかったものの、とにかく凄いヤバみだ……
どうなるッ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます