Ally-27:応変なる★ARAI(あるいは、ドッペル/ナックルbyセクター)
扉が開かれ目の前に広がってきたのは、光景では無く、まずは何とも言えないにおいであったのだけれど。
機械油……という奴だろうか、
それプラス金属の細かい粒子が室内に漂っているかのような、何とも表現しにくいけれどカナっぽい臭い。それを裏付けるかのように、金属で金属を高速で削っているような神経に来る耳障りな音も聞こえてくる。
簡易的と思われる、僕の背の高さくらいしかない
じゃ、じゃーまーすーるーでぇぇぇぇぇぇ、といきなりアライくんがいつもの周囲の環境音に左右されずによく通るしゃがれ声を、このだだっ広い空間のどことも決めずに張り上げるのだけれど。いやいやいや……
とは言え、仕切りによって視界が通らないこともあるので、取っ掛かりどうしていいかは迷っていたところなので助かったとも言えなくない。と、
「邪魔すんねやったら帰ってッ!!」
という、甲高いんだけど野太い、といった声質の主が、仕切りの向こうからそんな
おうぉほなまた……って何で帰らなあかんねんッ!! というこれまた類型的な
「……!!」
パーテーションの隙間から、その最奥が覗けた。目に入ったのは、壁際の作業台らしき机に向かった、広く角ばった背中だった。椅子に浅く腰かけて前のめりになっている姿勢からは作業に没頭しているように見受けられるけれど、この御方が先ほど返事をしてくれたのだろうか……
黒いタンクトップがそのやけに広い肩に、ぴったりと言うかぴっちりと言った感じで嵌まりこんでいる。暑いからか、身に着けたつなぎの上半身部分は諸肌脱ぎ状態で両袖が腰の部分で回されて縛られている。のはいいんだけど、その色……パステルピンク、と表現すればいいだろうか、いや、いい点はどこにも見当たりはしないのだけれど、とにかくその馬鹿でかい体に不釣り合いな可愛らしい色合いが、僕の脳に「不穏」の二文字を彫刻刀でえぐり刻むようにして迫ってくる……
あかん予感がする……と思わず尻込みしてしまった僕に助け舟が。
あ、あの!! お仕事中すみませんっ、私たち中古のブラウン管テレビを探していまして……との、謎の人物に対しても、果敢ながらどこかこちらの心を震わせ癒してくるかのような、天上の
普通の正常な男性であれば、その甘く薫るような言の葉に、相好を崩さずにいることなど出来ないと確信していた僕は、その人物がこちらを振り向きもせずに放った、
三ツ輪さんが、ないがしろにされただと……ッ?
そんな馬鹿なッ、と叫び出したい衝動を抑え込むのに必死な僕を尻目に、
ごほほふ、テレビあるかっつう話を……フフそこなる店員どの……わ、
しかして、普通の娑婆では効果
「あら~ん? こっちのむちむちの小太りぼーやは、あれれキミはいったい
脳内で
改めて向き合ってみると、その御仁の
地毛なのかヅラなのか、透き通るような白い髪の毛は高々と巻き上げられていて、ボリューミーな夜会巻きと言うよりは、
加えてその下にはエラの張った無駄に彫りが深い、例えるのならトーテムポールの下から二番目の奴によく似た巨顔が、特殊の方に片足を突っ込むほどの勢いで執拗に施された
そうだよね……どこかで揺り戻しはあると思っていたよ……でもこれほどまでとは予想だにはしてなかったけどね……はは、最近やけにツイていると思って調子にのって油断していたら、これが
そんな慟哭をしている暇ももちろんなく、むほほむほほほお名前わぁん? と完全に僕ひとり狙いのその言葉に自然と後ずさっていってしまうものの、
じ、ジローと言います、と、珍しい苗字のため特定されることを恐れて答えた僕の言葉に、ジロちゃんねぃ、ぴったりの、お・な・ま・え、との後頭部まで鳥肌が駆け上がってくるような御言葉をいただくのだけれど。
「よぉーこそ『ブリリアント』に。アタイはジョリーヌ。この、何でも直す、何でも揃うが売りの『なんでも機械店』のオーナーよん」
なら綴りは<Brilliant>だと思いますけど、との言葉は当然の如く喉奥で突っかかって出ることは無かった。
「ん・で? ブラウン管とか言ってたわねぇん、どんなのがお望みなのよぉん、ジロちゃんにだったらサ・ァ・ビ・ス、させてもらっちゃうわのよぉぉん」
無駄な流し目と尖らせた唇、粘り付く言葉。そもそも比較するのもおこがましいのだけれど、三ツ輪さんの持つ
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