Ally-13:面妖なる★ARAI(あるいは、哀と哀しみの/破天コーロ)


 答え―


 ③……答え③……答え③……


 場に流れるのはッ!! 確かなる戦闘の雰囲気だったッ……


 目立つことを極力避けてきたはずの僕がッ!! 何の因果律か、世界の中心に……ッ!? 世界の中心で、何故とさけぶ……ッ!! ……現実は非常に非情……


 薄暗い食堂内は結構なひとだかりになってきていたけど、アライくんのひと吠えが一喝となったのか、波紋のように静寂が広がり支配していくようであり。


その中を当の御大は、ぎしりというような音を立てながらガタガタの丸椅子から立ち上がると、いささか外連味を宿した所作/ゆらりとした挙動にて遂に動き始めたのだった……


 憤怒の激情を口を引き締めて抑えている。その分、両目はかっきりと開かれ、瞳孔は多分開いてはいけないレベルまで開ききっていると窺えた。心なしか長く高く張り出してきたかのように見える前髪トサカを傾け、肩を怒らせ、ガニ股で人の輪の中央へとにじり出ていく……と、


「……こっちのイカれイキれたコが首謀……ってこと。なかなか気合いの入った格好だけれど、やってることは随分に意味不明」


 誰に言うわけでも無く、現状把握の思考がぽつり漏れ出たような静かな、感情の無い言葉が、向かって左から二番目の三ツ輪さん(便宜上、三ツ輪ワンさんと呼称する)から紡がれてくる。


 改めて相対すると、天使あまつか 三ツ輪さん(僕らの同級生を便宜上こう呼ぶこととする)や、リコ御姉様おねいさま(便宜上以下略)が無自覚に発散している、下手なマイナスイオンよりもこちらを癒してくる「平安へいあんセントオーラさん」とでも呼ぶべき(呼ぶべき?)、暖かな雰囲気は微塵もない。


 ……あるのはただひたすらに、こちらを常に値踏みしてくるような、そんな、嫌な大人のような上からの冷徹目線だ。


「……別に意味ごちゃぁ、うんどれらに分かってもらおうっちゃ、おもでこば無ぇだご……ぁはに連なる根源ルーッツっちゃがろ、知りてゃあが、思どるだきのごどじゃるぁじ……」


 恐い。冷静なアライくんは僕ですら恐い。僕の目の前でフライトパンツのポケットに両手を突っ込んだ姿勢のまま、その決して大きくは無い背中が、やけに広くでかく感じる……


「はっは、なら勝手にやっとったらええやん。こっちが言いたいのんは、うちのシアンを、そなくだらんことに引き込むなちゅうことだけや」


 三ツ輪ツーさんは、もっとはっきりした見下し口調だ。しかし……何故この人だけ言葉が上方寄りなのだろう……なにか複雑な過去でもあるのだろうか……


「……本人ほんメコがよぅ、自分ずんぶの意思でやりちょま思ったごつを……他人にほちょごちょ言われじゃる筋合すじゃいは無ぇ、ちゅうとるごじ」


 あわわわ……か、完全に喧嘩を売っている体だけれど、大丈夫だろうか……よく見ると三ツ輪1・2さんの後ろには何かガラの悪そうな連中の姿もちらほら見て取れて、こちらに威嚇ばしった視線ガンを遠慮なく飛ばしてきているのだけれど……


「はぁ『他人』? シアンはうちらの妹やで、見りゃ分かるやろ、弟らと違うて」


 殊更に馬鹿にしたような口調で三ツ輪2さん。しかし、


「……自分以外はどこまでいっても『他人』じゃが。じゃどん、己の意思ばるは……意志ばるはながぁ……他人がどうごうしていいもんじゃ無がじょがらぁッ!!」


 またも唐突なシフトチェンジからの胴間声が、辺りの空気をびりびりと震わせていくようであり。


 いいこと言ってるようだけど、やっぱりアライくんは差し引き考えると面妖と言える。

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