783話 使徒教 ー空気支配と共同体の弊害ー

 そろそろ、最後のお題を説明しよう。


「ギルドマスターも言っていたでしょう。

『その場の空気で、反対など口に出来なかった』とね」


 プリュタニスが大きなため息をついた。


「たしかにそうですね。

内乱のときに、アミルカレさまのお手伝いをしましたが……。

議論しているうちに、意味不明な結論に向かう感じがありました。

必死に道理を説明しても、まったく無意味。

当たり前のことを、なんで自分はこんなに必死に話しているのか……。

笑いたくなりましたよ。

あれが空気と」


「そんなところです。

ギルドのサボタージュのときも『暗雲が晴れて、晴天が見える』なんて言っていたでしょう。

空気に押し流されると、その瞬間は開放感に浸れます。

このような空気が、瞬間的に絶対的教義となる。

これが使徒教です。

そして空気に歯向かう者は排除される。

不可能なら嫌われるでしょう。

プリュタニスは、とても苛立ったと思いますよ。

だから衝突してしまったのでしょう?」


 プリュタニスは、恨めしそうな目で俺を見た。


「ええ。

そこまでわかっていて……。

アルフレードさまは黙っていたのですか?」


 当然だ。

 理論優先だからこそ、現実を知ってもらう必要があるだろう。


「空気を理屈で説明しても、プリュタニスは受け入れないでしょう。

実体験が1番ですよ」


「それはそうですけど……。

あれはちょっと勘弁してほしかったですよ。

本気で悩んだのですから」


 ならば大変結構だよ。

 拒絶せずに悩むのは、いいことだ。


「人生何事も経験ですよ」


 キアラがジト目で俺を睨む。


「お兄さま……。

その言動が、年齢詐称疑惑を生んでいると理解されていますか?」


 知らんがな。

 全員強くうなずきやがった。

 この話題で俺は劣勢だ。

 わざとらしくせき払いをする。


「話を戻しましょう。

普通の教義は、簡単に変わりませんけどね。

使徒教では組織もそうですが……。

教義が固定されて、各人が強制されることを嫌います。

教条主義なんて言葉が、悪く言われますけどね。

その教義に従うからこそ入信できるわけです。

ラヴェンナの市民権取得も似たような仕組みにしてありますよね。

ところがラヴェンナの法ってのは普通の人には受け付けられない。

色々とキッチリ決まっている。

だから変わり者だけが欲しがるでしょう?」


 カルメンが笑いだした。

 変わり者代表だな。


「ああ。

私はキッチリしているほうが楽なんで……。

いいなと思いました。

普通の人にすれば、薄情で窮屈って印象ですね。

実際は過度な義務遂行を求められないから、楽なんですけど……。

決まっていること自体が嫌みたいですね。

私は曖昧に基準が変わるってのが嫌でした。

ラヴェンナのほうが、ずっと自由だと思いますよ。

なにを口にしても、責任がとれるなら構わないですし……。

誰かに思想を強制されることもないですから」


「線引きをしっかりしていますからね。

そうしなければ、多民族なんて不可能です。

使徒教はそこも融通無碍むげなのですよ。

自然は絶対善であるが故にね。

だからこそ使徒の正当性という、曖昧な世界が維持できたわけです。

そして冒険者ギルドは曖昧さと融通さが求められる。

だからこそ強く教化された。

ギルドが一番敬虔けいけんな使徒教徒でしょうね。

だいたいの説明は、これで終わりですよ。

あとはいくつか捕捉がありますけど……。

まず質問を受け付けましょう」


 アーデルヘイトが、不思議そうな顔で首をかしげた。


「実際は私たちも使徒教徒だったのですよね。

でも今は、ちょっと違うでしょう。

棄教できたのはなんでですか?

意識したこともありませんよ」


 当然の疑問だなぁ。

 これは社会基盤をつくる上で、慎重に考えたからな。


「皆さんが頑迷な使徒教徒でないこと。

これが大前提。

それと……この空気ってヤツを利用しましてね。

私の唱える統治形態が好ましい。

そう思ってもらえるようにしました。

そのときには、私のやることに反対できない空気が出来たでしょう。

ただのお人好しだから低姿勢だったわけではありません。

反対する空気を生まないための手段でしたからね」


 キアラが大きなため息をついた。


「そんな計画を隠していたのですか……」


「口にしたら失敗します。

無意識のうちに変えないと、自然の概念に負けてしまいますから。

そしてこの空気を徐々に消していきます。

議論や自分たちで考えることを推奨してね。

自然と空気は消えていく。

そこで徐々に法治を推し進めていったわけです。

あとは機能絶対主義にも訴えて、実際に成果をだしました。

結果を先に通して、理屈で空気の生まれる余地を消す。

使徒教は融通無碍むげで原則などないから、それを逆用しただけですよ」


 カルメンが呆れつつ苦笑した。


「やっぱり魔王の所業ですね。

普通の人は、そんなこと考えません」


 普通でないのはわかるが、なんで魔王になるんだよ!

 モデストが苦笑する。


「誰も普通の人だと思っていないだろう。

それでこの使徒教とやらを、どうするつもりですか?」


 酷い認識だ。

 それよりこの問題は大きすぎてなぁ……。


「正直どうしようもありません。

こちらから手をだすと、逆に反発しますからね。

出来るのは自滅しないように、種を蒔くことくらいですよ。

そもそも1000年続いて、人々の血肉になった使徒教を、簡単に変えることなど出来ません。

だからラヴェンナだけでも、しっかりとした体制をつくる。

あとは経済圏に法治を浸透させて、次への足場にするのが、私の見立てですよ。

世界を変えるのに、近道などありませんから」


 アーデルヘイトがビシっと手をあげる。


「旦那さま……。

途方もない話で、まったく疑問なんて沸きません。

それで補足事項ってなんですか?」


 自信満々の挙手から、それをいうかね。

 いきなり宗教論なんて言われて……困惑するのは仕方ないか。


「共同体が強固故に発生する副作用ですけどね。

社会の規範より、共同体の規範が優先されることです。

ギルドのサボタージュや、ポンピドゥ一族の行動だけではありません」


 プリュタニスが辟易した顔で頭をふる。


「たしかにふたつが相反すると、共同体の規範が優先しますね。

内乱で嫌というほど見ましたよ」


「反面、共同体の名誉をけがすことは恐れますよ。

この世界は技術レベルの割に驚く程治安がいいのです。

そして名誉も責任も、共同体で受け止めるとは……。

抜群の働きをしても、個人が栄誉を授けられることはない。

個人が罪を犯しても同様です。

共同体内で裁きが下る可能性はありますけどね。

その内実は、共同体の名誉をけがした罪。

犯した罪に対してではありません。

あくまで共同体間での処理になりますね」


 アーデルヘイトが嫌そうな顔で手をあげた。


「あのぅ……。

もしかして共同体に属さない人が殺されたとしたら?」


 そこに気がついたか。


「問題にすらならないでしょう。

これがさらに共同体への帰属意識を高めることになります。

しないと自分の安全すら危ういのですから。

そして共同体の誰かが、別の共同体の誰かを殺した場合……」


 アーデルヘイトは心底嫌な顔をする。


「その共同体の一員というだけで、報復の対象になるわけですか」


 それがこの世界の慣習だな。

 無意識だろうが、第5はその認識で町を壊滅させたと思う。


「ええ」


「その論理だと……。

ラヴェンナはとても理解不可能ではないでしょうか?」


 それだとちょっと困るからな。

 多少の偽装工作をしている。


「そうでもありませんよ。

共同体の連合だという認識です。

市民が殺されたとき、ラヴェンナをあげて報復したのは……。

ラヴェンナという共同体からの報復だ。

そう認識したでしょうね。

ただ……。

なにか違うと猜疑さいぎの目で見ているでしょうけど。

それは正しくて、共同体の枠は残しています。

部族長は代表者にしていますから。

内実は談合など出来ない仕組みですけどね」


「なるほど~。

逆に言えば、悪いことをしても……。

共同体の問題にならなければいいってことですか?」


「そうなりますね。

とはいえ社会と断絶しているわけではありません。

批判にさらされたら、共同体の名誉を守るため、なんらかのことはするでしょう。

だから罪の責任を問うても無意味ですよ。

認識が違うのですから」


「なんか複雑ですねぇ……」


 プリュタニスがフンと鼻を鳴らした。


「そんなのはしょっちゅう見ましたよ。

そのときの謝罪のセリフは『お騒がせして申し訳ない』とか、『迷惑を掛けて申し訳ない』でしたね。

そもそも被害者本人への謝罪じゃない。

だから不思議だったのですよ。

無関係な私に謝られてどうするのかと。

言われてみると……。

共同体を騒がせてしまったから申し訳ない。

そうなるわけですか」


 それを疑問に思うだけでなく、口にすれば嫌われる。

 それが使徒教だ。


「基本は隠しますけどね。

隠しきれないと、形ばかりの処分で終わります。

ギルドを思い出してください。

ポンピドゥ一族にすれば、ギルドは他人です。

でも庶民に比べたら、ギルドは身内でしょう。

そしてギルドマスターの曾祖父そうそふがやったことは……。

ギルドの認識では、身内が他所に対してやりすぎただけ。

ポンピドゥ一族もそれはわかっているのです。

明確な処分など下されない自信がある。

他所のために身内に厳しい処分など取れない。

共同体の和を保つことが、最優先事項となりますから。

実際にギルトがやったことは、すごく曖昧な対処でした」


 アーデルヘイトは眉をひそめた。

 善良なだけに飲み下せないのだろうな。


「なんだか……モヤモヤしますね。

あれ? ギルドも共同体でポンピドゥも共同体?

共同体って分類があるのですか」


「ええ。

人類という共同体があって、その中に国がある。

国の中には……といった感じです。

組織ではなく円の中に線が引いてある。

その線の内側が共同体って認識ですよ。

そこには濃淡があるだけです。

ケースバイケースで他人と身内が変わります」


 プリュタニスが辟易した顔で、ため息をつく。


「曖昧だからこそ融通が利くわけですか」


「そして最大の問題がでてきます。

共同体の不祥事を内部告発する。

これは最大のタブーです」


 キアラが手を止めて苦笑した。


「ラヴェンナだと知っていて告発しないと……。

関与しているとみなしますね。

当初は耳目の仕事で、内部の不祥事を探るのが重要だ、と言われましたもの。

これは結構、抵抗が強かったですわ。

お兄さまが正面突破して、力でねじ伏せたのですわね」


 統治の根幹に関わる話だからな。

 妥協などしては、骨抜きにされる。


「ありとあらゆる手を使いましたよ。

健全な発展のためには、言論の自由が欠かせません。

そのためには、共同体規範の優先など認められませんでしたからね」


「皆も不思議がっていましたわ。

でもお兄さまがそこまでこだわるなら、と協力してくれましたわね。

お兄さまのやることは正しいって空気を利用して。

しかも告発者のアフターケアまで完璧に考えていましたの」


「あれは譲れない点でしたからね。

『父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。

直きことの内に在り』ってやつが邪魔でした。

親子なら仕方ありません。

ラヴェンナでも親族への証言は求められませんし、証拠として採用しません。

隠したとしても、微罪に留まりますよね。

ただ……共同体は疑似家族なのです。

だから使徒教では家族の論理が適用される。

内部告発なんて以ての外ですよ。

共同体に対する反逆なので、社会も許しません。

仮にそれが、重大な不祥事だとしても……。

口では正直だと称賛しつつ、距離をとるでしょう?

どことなく警戒するってヤツです。

仮に自分が不祥事を起こしたとき、コイツに暴露されるのではとね。

薄情で冷たい人間だ、と敬遠される末路ですよ」


 これを認めては、不祥事の隠蔽いんぺいがまかり通る。

 すぐにラヴェンナは空中分解してしまうだろう。


「ラヴェンナでは、かなりなくなりましたけど……。

他所だとそうですわね」


 完全な撲滅まで至っていない。

 それほどこの概念は強固なのだ。

 長期戦のつもりでやるさ。


「この共同体意識の弊害はですねぇ。

各国が急造した軍隊に顕著です。

厳密な指揮系統はないし、指示も曖昧ですから」


 プリュタニスが思いっきり顔をしかめた。

 アミルカレ兄さんの補佐で、えらい苦労したからな。


「嫌なことを思い出しましたよ。

あれですね。

こちらは明確な指示をだしたのに、全然動かない。

確認して唖然としましたよ。

実際に下されるのは精神的な訓示が並ぶ。

最後は……『○○に指示させる』になっていましたよ」


「明確な指示を嫌いますからね。

その結果として、そんな形になるでしょう。

さらに詳細を確認して、胃が痛くなりませんでしたか?」


 プリュタニスが胃の辺りを抑える。

 心底嫌だったらしい。


「よくわかりますね……。

皆さんも聞いてください!

酷いんですよ!!

作戦会議に出席していた、ある貴族が指示を伝える役目だったのですが……。

さっき言った書式になっていました」


 これはかなりのストレスだったらしい。

 俺は笑いを堪えるのが大変だった。

 アーデルヘイトが驚いた顔をして注目されたから助かったよ。


「ええっ。

じゃあその貴族が、勝手に指示を変えることも出来るじゃないですか」


 プリュタニスが恨めしそうな顔をする。

 珍しい愚痴は、怒濤どとうの勢いだな。


「その通りですよ。

そこから……開いた口が塞がらないのです。

これでは指示がわからない。

だから兵隊長が、確認をするでしょう。

ところがその貴族に、直接聞くのは常識違反なのです。

どんな常識だよ、と思いましたよ」


「それじゃあ誰に聞くのですか?」


「貴族の家臣です。

兵隊長が使い走りをだして、家臣に説明を求める。

それで作戦の意図が説明されます。

その結果を兵隊長に伝える。

そこで兵隊長が納得しないと、また家臣に相談させる始末ですよ。

1回の命令で、何回もやりとりするのです。

命令の意味がないし、遅すぎますよ。

揚げ句の果ては、兵隊長がその貴族に直談判しにいくとか。

だから命令が、骨抜きになるなんてザラでしたよ。

アルフレードさまが言っている面従腹背です」


 クリームヒルトが呆れた顔で、ため息をついた。


「なんでそんな形になるのですか?

ラヴェンナだと考えられません。

議論の間は、自由に意見が言えますけど……。

一度指示がでれば……従うか職を辞するかでしょう?

ラヴェンナ軍なら従うか処罰されるでしょうけど」


 そりゃラヴェンナは、組織論込みの社会だからな。


「自然の概念ですよ。

明確に指示されるのは不自然ですからね。

『頭ごなしだ』とか言って反発するでしょう。

だから使徒教徒が軍をつくると、軍とは呼べない組織ができあがるのです。

そして共同体意識が指令より勝る。

そこでは人望が最大の武器です。

漠然として曖昧なものには、結構弱い。

人望がないと、命令は骨抜きにされる。

プリュタニスの例のようにね。

きっと『言っていることはわかるが、言い方が気に食わない』とか言い訳をしたでしょう」


 プリュタニスは口をとがらせる。


「腹が立つくらいそのとおりですよ。

悪かったですね。

人望ゼロで」


 俺は笑って手をふった。

 人望ゼロはお互いさまだよ。


「使徒教徒相手では仕方ありませんよ。

プリュタニスのような怜悧れいりなタイプは嫌われますから。

私だって社会的地位がなければ人望皆無です。

しがらみなどの理不尽に耐えかねたとき……。

私に頼ると便利ってだけですから。

ただ普段はでしゃばるな、といった便利屋的人望ですよ」


 キアラはクスクスと笑いだした。


「まあプリュタニスが愚痴るのは、実に珍しいですわね。

この話で考えると、人類連合なんて絶望しかないですわ」


「泣き言を言っても始まりません。

やれることをやるだけですよ」


 プリュタニスが力なく頭をふる。


「説得も無意味でしたからね……」


「そうでしょう。

言葉から魔術を分離させていませんから」


 カルメンが呆れ顔でため息をついた。


「また難しいことを言いだしましたね。

だからアルフレードさまの説明って油断できません」


 言霊信仰と言ってもいいが……。

 どちらかと言えば呪術的要素が強い。


「偉そうに勿体をつけただけです。

例えば失敗するとか……負ける。

この単語を口にすると嫌われますよね。

縁起でもないって。

口にした言葉が成就してしまうかのような前提です。

タブーになっているでしょう?」


 プリュタニスが再び鼻を鳴らす。


「言ってはいけない。

議論してはいけないとかザラですね。

しなければ勝てるのかと言いたいですよ」


「そうは思わないけど、してはいけないと思い込んでいるってところですよ。

災害の話をすると『ケシカラン』と言われます。

偶然災害が発生すると『ほら見たことか』とね。

もしくは口にした人のせいにすらされるでしょう」


「本当にそれですよ……」


「理屈ではありません。

不自然なことを嫌うが故の心理的作用とも言えますがね。

聞きたくないことを聞かされる。

これは不自然なのですよ。

つまり絶対悪です。

そして憤りは絶対悪をなした人に向かう。

どんなに理屈で説いてもムダです。

本人だって理屈ではわかっているのですから。

でもそれを指摘されるのは、不自然だから絶対悪なのです。

本心が自然に発露することは善である……が故にね。

どうしようもありませんよ。

呪いをかけられた、と無意識下で感じているのですから」


 プリュタニスは天を仰ぐ。


「それなら呪術の世界からでて来るな……と言いたいですよ。

それも聞きたくないから不自然と。

勘弁してほしいですよ。

だからこそラヴェンナの軍は早くて強い。

こんな組織でも迅速で統率がとれるペルサキス卿は何者なんですかね」


 ペルサキスは天才だからな。

 なにより人望がある。


 それにしても……余程嫌だったようだな。

 俺だって嫌だ。


「本来言論は仮説に過ぎません。

それを議論していくことで立証する。

ところが魔術なので、仮説ではなく事実になる。

だから言葉と人格の分離が出来ずに、議論が誹謗ひぼう中傷合戦になるのですよ。

そしてよく使われるレッテル貼り。

これも言ったことが事実になれと……。

そんな願望の賜と言えます。

呪いを掛けているようなものですから。

魔法でも呪いは必ず言葉とセットです。

言葉には不思議な力があるという認識は、誰しもが持っている。

だからいけない言葉をみだりに口にしてはいけない……となるわけです」


 クリームヒルトが遠い目をして、ため息をついた。


「そうですね。

魔族への差別はいけないと言われていますけど……。

ここでは口にするのも憚られています。

それでいてその意識は消えていませんでした。

ラヴェンナにいると忘れてしまいがちですよ」


 ジャン=クリストフに絡まれた件もそうだ。

 サロモン殿下が特別の配慮をした。

 これ自体が、差別意識の存在を示唆している。


「まったく困った話ですよ。

言葉が絶対化してしまって、現実を覆い隠してしまうのですから。

使徒教について、私の認識はこんなところです。

せっかくなので、これから創設されるメディアの危険性についてお話しましょうか。

使徒教を話したことで容易になりました」


 これが色々危険なんだよな。

 使徒教徒にはそれが顕著だ。

 難しい話だが……。

 使徒教を説明したことで話しやすくなった。


 カルメンが心底嫌そうな顔をする。


「アルカディア難民のあれですか……」


「あれが使徒教と融合することでおこる弊害ですね」


 カルメンがジト目で俺を睨む。


「正直あの話は、もう聞きたくないのですが……。

ホント嫌らしいですね。

聞きたくないことをタブーにしてもなんら解決はしない。

そんな話をされたら……。

するなと言えないじゃないですか」


 キアラまでジト目で俺を睨む。


「だから魔王って呼ばれるのですわ」


 だからってなんでだよ!!

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